みなさん、お久しぶりです。
すっかりご無沙汰してしまいまして……。
今回からは、年明けから始まったレディースオープントーナメント2006、そしてつい先日幕を閉じた第33期女流名人位戦5番勝負の模様をお届けいたします。
*レディースオープントーナメント2006*
~第1局・1月11日~
1999年以来の決勝進出。絶対に決めるぞ!と燃えていました。対する相手は里見香奈女流1級、対局姿はセーラー服、まだあどけなさが残る中学3年生です。
でもこの里見1級、タダモノではありません。
女流棋界の将来を嘱望されている最有力若手棋士です。
昨年対戦したときには負かされており、今回は何としてでも負けられない、勝たなくてはいけない相手だと思っていました。
さて、対局室に入ると……今までにない報道陣の数……。
もちろん私を取材するために来ているのではないことはわかっています。
そして対局室に流れる空気がいつもと違う。
今まで私が挑戦者の立場だったときには、みんなが背中を後押ししてくれているような雰囲気を感じていましたが、今回ばかりは当然逆です。
この光景を見た瞬間、空気を感じた瞬間、平常心でなくなったのかもしれません。
気合はプレッシャーという別物に形を変え、私自身の敵となっていました。
こうなってはいけません。
気持ちも消極的になってしまい、肝心な局面でも勝負することを恐れ、まったくもって酷い内容の将棋を指してしまいました。
完敗です。
里見さんは長時間の集中からか顔を真っ赤に上気させ、とても嬉しそうでした。
逆に私は……負けたことももちろん残念でしたが、それ以上に自分の気持ちの弱さにショックを受けました。
またその夜、里見さんを取材していたNHKニュースでこの対局の模様も流れました。
正直、見たくなかったですけど、見てよかったのかもしれません。
インタビューを受けていた里見さんの一言でハッとしました。
正確な言葉は忘れてしまいましたが、
「負けない、という気持ちは自分が1番強く持っている」
というような意味合いのことを言われていました。
目が覚めたような思いでした。
“負けられない”、“勝たなくては”ではなく私も“負けない”と、もっともっと強く思って戦おうと気持ちを入れ替えました。
~第2局・1月25日~
3番勝負ですからカド番、もう後がありません。
でも、この棋戦はトーナメントですから、決勝以前のトーナメント戦と同じく後がない状態に戻っただけのこと。
後先考えずに、目の前の一番に集中するのみです、“負けない”気持ちを強く持って……。
報道陣は1局目よりかなり増えました。
当然ですね、中学生棋士が優勝するかもしれないのですから。
でも、この報道陣を見ても、もう心に波が立つことはありません。
大丈夫。
自分の将棋が指せる。
とはいえ、かなりのプレッシャーを感じ、本当はブルブルでしたけど(笑)。
序中盤はわりと思い通りに指し進められたと思いますが、ヒタヒタと背後に迫られていることはイヤでも感じます。
ただ、善悪は抜きにして、そんな忙しい局面と精神状態の中、勝ち急がなかったことが勝因だったのではないかと思います。
この一勝は本当にホッとしました。第1局に負けてから生きた心地がしませんでしたが、文字通り生き返った気分でした。
そして、里見さんが共同記者会見をしているのを横目に帰路につきました。
久しぶりによく眠れたような気がします。
~第3局・2月22日~
2月から女流名人位戦が始まったので、日程にだいぶ間隔が開きました。
通常、1勝1敗という微妙なところで1ヵ月も開くのは嫌なものですが、重要な対局が続いていたのでかえって緊張感が保てていい状態にあったような気がします。
朝、対局室に入り報道陣を見る。
もう慣れたもんね。
しかし……。
これは凄過ぎる。
というか、里見さんを追いかけているカメラマンがほとんど私の席にかぶっているのですが……。
それより何より、あまりの報道陣の多さで、私、自分の席に辿り着ける道順がわからないのですが……。
これだけのマスコミを背に戦うのは初めての経験です。
緊張と楽しみとでゾクゾクしました。
最終局ということで改めて振り駒が行われ、第1局に続き再び後手になりました。
ある程度、作戦は考えてありました。
それが今回に限ってはうまくいったようで、私のわずかばかりの経験値が活きる展開になりました。
お互い我慢の展開だったので、里見さんの若さが出たというところでしょうか。
しかしそれは良いことです。
積極的に局面を打開する、その姿勢はごく自然であり、これほど大きな舞台でもその指し手を選べる度胸は素晴らしいと思いました。
結果、2勝1敗で優勝することができ、何とか女流名人としての役目を果たせ、そして自分との戦いに勝つことができました。
よかった、よかった……。
この3番勝負は私にとっても素晴らしい経験となりました。
逆風の中で戦うことの大変さもよくわかりました。
でも、大変だったのは私だけではないはずです。
里見さんも想像以上に注目され、戸惑うこともあったでしょう。
いろいろな思いもあったでしょうし、彼女は彼女なりのプレッシャーを感じていたと思います。
しかし、それほどのプレッシャーがかかる勝負ができる棋士が何人いるのでしょう?
そんな勝負ができてこそ棋士冥利に尽きる、と思います。
里見さんの登場で、女流棋界は一気に面白くなりました(指してる方は大変だけど)。
今後ももう少し続くであろう、女流戦国時代。
要注目です!!










