「お疲れ様でしたぁ~!」
六本木のコパスティック・カフェでは、毎週火曜日の23時過ぎになると、この声が聞こえる。4/4~5/16の毎週火曜日、ここのレストランで「Simplebird」(作:梶原俊治/自由派DNA、演出:松井カズユキ)という芝居が上演されている。僕も出演者の一人。
本番終了後、ビールを飲んでいる役者を捕まえて話を聞いてみた。
石橋忠士。兵庫県出身で関西弁丸出しの彼は5年前に上京。ダンスパフォーマンスの「ジュゴン」というグループに所属する彼は、今回の芝居でも持ち味を生かしたハイテンションな演技で、狭い舞台上を飛び跳ねている。そんな石橋君の過去の話を掘り返していたら、面白い話が聞けたので紹介しよう。
高校を出て、右も左も分からないまま「芝居がしたい!」という一念で、地元兵庫のとある劇団に入団。しかし、その劇団が曲者だったのだ。
劇団費用としてまず10万円を徴収される。更に「デカイ劇場でやろうじゃないか!」を合言葉に20万円徴収。その後もなんだかんだ理由をつけて、気付いた時には100万円以上も徴収されていた。しかし、待てど暮らせど大劇場での上演の話はない。「おかしいな?」と思っていた頃のお正月、なぜかお寺に連れて行かれたそうだ。そしてお寺の奥にある怪しげなエレベーターで地下へ連れて行かれ、キラキラと輝く部屋で読経される。最後に一言「どうして信仰しないのだ!」。
実はこの劇団、宗教団体的なところがあり、収めたお金も代表の懐に渡っていた。そんな曲者劇団の代表は、そのお金で大きな家を建てていたのだ!! 一応、劇団として、震災で潰れたプールを買い取り、自分たちで工事をして、それなりの劇場を作ったりはしたが、100万円分還元される事はなかった。
結局、大きな借金を抱えてしまった石橋君。その劇団を退団し、とある工場で死ぬ気で働く。実家だったということもあり、月1万円の生活を続け、3ヵ月で借金を返済。さらに働き続け貯金を作り、「今度こそはあんな思いはしないように!」と東京の大きな劇団の養成所に入り、芝居を一から学び直したのだ。
「あのときのことは記憶から消したいですよ! ま、今となってはいいネタになってますけどね」と笑いながら話してくれたが、結構トラウマになっている様子。そんなトラウマを振払うように、舞台上で大暴れする石橋君。あの経験は、彼のパワーの源なのかもしれない。
何かを失った者は新しい何かを得る。
今回の芝居のテーマだ。新しいパワーを身につけた石橋君を是非観に来て下さい。あ、ついでに僕のことも観に来て下さい。





