プロフィール
渡辺慎一郎
1974年(昭和49年)2月10日生まれ。俳優。毎年全員オーディションで開催される舞台「ラフカット2003」への出演などを経て、映画、TVドラマ、商業演劇、小劇場など作品の規模を問わず、演技者として活動

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2005年12月27日 (火)
新人プロデューサー嶋澤ひろみちゃんご来店。

Photo_77  「しんに~~い」。
 「あ、ひぃちゃん、いらっしゃい」。
 今日の「舞台裏居酒屋しんさん」のお客さんは、いつも元気いっぱいの嶋澤ひろみちゃんだ。
 2月18日・19日に天王洲アイルにあるスフィアメックスという劇場で上演される『プロモーターズ』(作・演出 岡本貴也)のプロデューサー兼出演者。
 実は僕もこの芝居に出演するのだが、今日はそのチラシ撮影兼顔合わせの帰りにちょっと誘ってみた。

 初めてのプロデュースということで、右も左も分からないながらも、自分の考えややりたいことを、時には目を潤ませながら必死にみんなに伝えようとする姿はとても共感が持てる。ま、平たく言ってしまえばそういう姿勢が「好き」だということだ。

 実は、芝居の世界っていうのはホントに狭い世界なのだ。
 僕が10月に出演した『どツボッ!』(作・演出 中津留章仁/TRASHMASTERS)という芝居の初日、彼女は客席にいた。
 他の出演者の知り合いという関係で観に来てくれていたんだけど、実は彼女、僕の友だちが何人も所属している『劇団前方公演墳』の女優さんで、僕自身も今までに何度も彼女の芝居を観て、非常に興味を持っていたのだ。
 その日の公演が終わり、帰りがけの彼女をつかまえて「何度か観させて貰ってるんです。今日はありがとうございました」と声をかけると、「キャ~! 話したかったんです! 2月に旗揚げするので出てください!!」と。

 いきなり口説かれた。

Photo_78  しかも話を聞いてみると、まだ詳しいことは決まっていないらしい。
 彼女のあまりの情熱と、エネルギーに押されてしまい、思わず「はい」と答えてしまったのが、今回の始まりだったのだ。
 後々、「ホントに引き受けちゃってよかったのかな? 実現するのか?」と心配していたけど、そこから彼女は精力的に走り回り、色んな人の協力を得て、ついに彼女の団体の旗揚げが実現することになった。

 嶋澤さんは、高校を卒業してまず美容師になった。
 それまでもそれからも、ずっと、思ったことややりたいことを日記に書き続けてきていたと話す。
 小さいころからシャイ&コンプレックスの塊で、かけっこをすれば1着にはなれずいつも2着以降だった。そんな彼女自身が唯一周囲に褒められたのがお遊戯会だった。
 
 「役者になりたい」。
 そう思って前方公演墳のオーディションを受けた。
 「あれからもう6年が経ったんだ」と彼女は言った。

 彼女の役者としてのキーワードは「表現」。
 夢は「いつか自分ひとりで表現する場を持ちたい。さらには誰かが表現できる場所を作りたい!」とまたもや瞳を潤ませながら話してくれた。かわいいじゃないか!
 今回の芝居に誘われたときも、「本当の表現者と呼べる人だけを集めて何かがしたいから、だから表現者だって思えるしんにいに協力して欲しい」って言われた。
 彼女の夢の第一歩に少しでも協力できればと思う。
 きっと楽しい舞台が出来るはずだ。

2005年12月21日 (水)
ガンダム博士・新井大輔さんご来店。

Photo_63  「あ、しんさん、いたんだ?」
 「お前と違って遅刻しねぇよ。いらっしゃい。」

 今日の「舞台裏居酒屋しんさん」のお客さんは、腰が低いのかどうか分からない、それが魅力でもある新井大輔という若い役者。
 12月27日~30日まで、目白にあるアイピット目白という劇場で上演される『青春四谷怪談』(作・演出:石川均)の稽古帰りに「たまには芝居の話でもしましょうよ」と顔を出してくれた。

 異常なほどのガンダム好きで、何の話をしていてもすぐにガンダムに例えられて困ってしまうことが多々あるこの男、今回の稽古でも……。

 芝居の稽古を進めていく過程で、よく『エチュード』という稽古をやることがある。いわゆる台詞も動きも勝手に自分で作りなさいという即興芝居を打つというものだ。俺はこれが苦手でできればやりたくないのだが、多くの劇団でこれをとり入れているのが現状。

 今回の稽古場での『エチュード』、テーマは「先生」。何かの先生になって、即興で講義をしてみなさいという課題。ご想像通り、新井はガンダム講義を始めたのだ。
 もちろん5~6分の講義ではガンダムの全ては語りきれず、不完全燃焼で終わってしまったのだが、これを聞いて「ガンダムを見てみよう」と思った人が増えたと本人は言っている。それを鵜呑みにすると「なんて単純な人たちなんだ。ただ、ガンダム好き人口を増やした新井に拍手!(実は俺もガンダム嫌いじゃないのよね)」と言いたくなる。

 ちなみに、新井くんは前に所属していた事務所の後輩でもある。
 あれは何年前になるだろう? 神楽坂die platzという劇場で一緒に舞台に立ったのだが、稽古中に、いかにも「俺、芝居のことよく分かってますよ」的な態度。
 こいつはどこかで経験を積んできたんだろうなと思って接していたのだが、よくよく聞いてみるとそれが初舞台。しかも、こないだまではサラリーマンだったって! なんなんだ、こいつは。あの自信満々な態度はどこから出てきたんだ!
 しかも、そのふてぶてしい態度が幸いしてか、すげぇいい役もらってやんの。結果、どうなったかはみなさまのご想像にお任せいたします。ま、あまり背伸びはするなってことですな。

 新井くんは東京電気大学出身で、元々は某メーカーで普通にサラリーマンをやっていた彼。色々事情があって、先のことを考える余裕のないまま4年で退社。やることもなくテレビを見るだけの暮らしが続いた。
 そんな時にテレビを見ていて、初めて「役者」を職業として意識した。
 「今までやってきた仕事とは違う、決められた枠を考えなくていい仕事。いろんなことができる仕事」。
 これが役者という職業の魅力だという。
 さらに、芝居を始めてみたら、「日常やっていることを舞台上に持ってくるだけだから、できないはずはない。でも苦労する。演技の答えはひとつじゃないことを知った」と語る。
 これのおもしろさを知ったことで、さらにおもしろくなって抜け出せなくなった。確かに、俺もそうだ。最初はなんとなく始めたけど、どんどんおもしろくなって抜け出せなくなっている。

 彼の役者としてのモットーは「決めつけない。決め付けて自分の幅を狭めない」。出会ったころの自信に満ちた表情は、今やうわべだけではなくなっているように感じた。
 おもしろいじゃないか。いっそのこと、このまま一緒に、ハマるところまでハマってみようじゃないか、新井くん!

2005年12月16日 (金)
澤木柚季江(ゆきえ)ちゃんご来店!

Photo_41  「しんさん、待ちましたか? すいません」。
 「大丈夫だよ、いらっしゃい」。
 昔から変わらない、ちょっと鼻にかかった独特の声。澤木柚季江(ゆきえ)ちゃんだ。
 12月22日から26日まで、池袋のシアターグリーンで上演される『メリーさんのクリスマス』(脚本・演出 祝しょ~ご/SHOW&GO FESTIVAL)の稽古後、柚季江ちゃんが遊びに来てくれた。

 この芝居の会場となるシアターグリーン。
 池袋の本立寺の墓地裏手にあるんだけど、昔っからシアターグリーンには『出る』って噂がある。結構有名な話。しかも、なんか造りが古かったのね、かなり。噂が立つのも納得の古さ。
 そんなシアターグリーンが今年改装された。以前より広くてきれいになった(きれいになるのは当たり前か!)。だけど、広くするために墓地の一部を切り崩したとの噂。
 いや、わからないよ、ホントかどうか。

 この劇団、今回が旗揚げ3本目で、過去の2本ともお化けが登場してくる物語を芝居にしていた。だけど、今回はお化けが出ない本にしたらしい。噂を信じて……。
 それで、素敵な恋の物語を上演することになったというのだが、どこまで信じるかはあなた次第……?

 ちなみに、僕が彼女と出会ったのは9年前。
 彼女は、まだ恋もろくに知らないような純情な感じの高校生で、芝居のレッスンにも制服でそのまま来ていた。
 「高校生だけど、芝居に対する姿勢がしっかりしているな」。
 そう思ったのをすごくよく覚えている。あの頃から彼女には惹かれていたな。
 実は彼女、小学生の頃から役者になりたかったらしい。
 テレビが好きで、ドラマが大好きで。「役を演じると他の人になれる」ということに魅力を感じていたようだ。

 「きっとね、そこには『自分否定』があったと思うんです」。
 当時を振り返りながら、彼女は笑う。
 両親がいて、2人のお兄ちゃんがいて、極々普通の家庭に生まれ育った中で、普通の家庭に生まれ育ったからこそ、一般の、自分のモラルで考えると経験できないようなことを経験したかった。
 だから役者になりたかったと言う。

 久しぶりに会った彼女は、制服を着ていた頃よりも、更に芝居に対する意欲が強くなっていた。
 それは彼女の成長なのか、それとも芝居の魅力に“とりつかれて”しまったのか。
 お酒も飲めるようになり、恋の物語を知ったのだろうか?
 僕は彼女の顔を見ながら、彼女がどんな「他人の人生」を演じて見せてくれるのか、楽しみだと感じていた。

2005年12月10日 (土)
元ラガーマン役者・酒井宏之さんご来店!

Photo_15 「しんちゃん、ウィ~ッス」
「あ、どもども~」
 男気あふれる太い声で「舞台裏居酒屋しんさん」の暖簾をくぐってきたのは酒井宏之さんという若手の役者さんだ。
 12月9日~18日まで、新宿スペース107という劇場で上演される『GAKUYA』(作・演出 中津留章仁/TRASHMASTERS)という作品の稽古帰りに、ちょっと息抜きで顔を見せてくれた。

 実はこの酒井さん、元ラグビー日本A代表。大東文化大学時代からリコーという実業団に入団するという、まさしくホンモノの筋肉マン。ラグビーをやめた後もトレーニングは欠かさず、某局の筋肉番組では2回連続で3位になるほどの実力&体力の持ち主。すこぶるムキムキな男なのだ。
 ちなみに、その筋肉への意欲はすさまじいものがあり、稽古場にまでトレーニング器具を持ちこみ、空き時間を見つけては筋力アップのためのトレーニングをしているのだとか。いやいや、まず稽古しようよ!
 まあ、そんなことはさておき、今回の『GAKUYA』の稽古場でも、酒井さんの持ち込んだ器具にみんなが興味を持ってしまい、どういうわけか稽古場で筋力トレーニングが流行っているらしい。なんのこっちゃ!

 さて、僕と酒井さんとの出会いは今年の7月。下北沢のレストランで上演した『世間話』(作・演出 中津留章仁/TRASHMASTERS)という作品の稽古初日だった。身体がでっかくて、筋肉質でがっちりした身体なのに、なんだかちっちゃくなってそわそわしていた。実は彼はこの芝居が初舞台だったのだ。
 本読みが始まると、おせじにも上手いとは言えないが、必死に取りくんでいく。
 この時から「この人、きっと何か面白いことをしてくれるだろう!」って感じてたんだけど、それは見事に的中した。

 『世間話』初日。
 下北沢のとある居酒屋で、初日打ち上げが開かれていたのだが、この日は芝居全体の出来が悪く、演出からきついダメ出し。みんな凹んでいて、まるでお通夜のような暗い雰囲気の飲み会だった。もちろん僕も「あちゃー……」とうなだれていた。
 そのまんまの空気で店を出て、なんとなく駅に向かって移動を始めたときだった。みんなの前を肌色の物体がすごいスピードで駆け抜けていく。何かと思ってその物体を見てみるとそこには……。

 赤いブリーフ一丁で原付にまたがり、走り回る筋肉男……違う、酒井さん!
 「ぎゃははは!」。一同大爆笑!!!

 今までのお通夜のような雰囲気が一気に吹き飛んだ。よくこのタイミングで……なんというチャレンジャー。本人曰く「ただ脱げばいいんじゃない! 脱ぐタイミングが大事なんだ!」。
 結局、その後もたびたび、酒井さんの赤パン姿を目撃することになるのだが、確かにそのタイミングは絶妙と言えた。

 とにかく目立つことの好きな酒井さん。ラグビーを始めたのも、
「人前で何かやって目立ちたかった。テレビに出たかったから」と本気の目。
 まあ、その本気の姿勢が幸いしてか、A代表になり、「ラガーマンとして悔いなし」と思ったから、ラグビーをやめ、役者という未知なる表現の世界へ飛びこんだ。

「とにかく、一生ドキドキしていたい。ドキドキしてなきゃ楽しくないじゃん!」

 いいねえ。僕は、酒井さんの求道者っぽいところが大好きだ。役者ってのは、このドキドキ感がないと始まらない。

 今回の『GAKUYA』は、酒井さんにとって初めての、劇場での芝居。『ドキドキ』を求め続ける酒井さんは、これから俺たちにどんな『ドキドキ』を与え続けてくれるのだろう。
それにしても、あの人、どうしていつも赤パン履いてるんだろうか……

 この酒井さんに興味がある人は、ぜひホームページ(http://www.the-sakai12.com)に
遊びに行ってみてくださいね! 

2005年12月 1日 (木)
芝居による「自分探し」のはじまり。

01_27「芝居って、おもしろいですか?」
 こう聞かれて、おもしろくないと答える役者はまずいない。
 俺、つまり渡辺慎一郎という役者も
「おもしろいっすよ、やめられないっすね!」と、
いつもこれまた即答、断言。
 芝居というものは(ドラマについてもそうかもしれないが)、
好きだからこそ飛び込む道であり、やっていける“場所”なのだ。
 では、世の中の役者の多くをひきつける「芝居の魅力」ってなんなんだろう?

 大学4年の夏。きっかけは、某ハム会社の就職試験の面接。
面接官からは「あなたにとって就職とはなんですか?」との質問。
他の学生たちは「親からの自立」とか「経済的な独立」とか答えている。
なんにも考えていなかった俺も周りに合わせて「親からの経済的自立」とかなんとか適当なことを言った気がする、確か。
でも、そのとき、自分の中には大きな「?」が生まれてた。

 なんで就職するの、俺?

 答えは簡単。「大学を卒業した」から。
普通の人生を進めば、大学の後は就職だから。だから就職。
そう思った瞬間に、もっと自分らしい何かがしたいと感じた。
それが、役者という道だった。

なぜ役者だったのかは今でも分からない。
でも、きっと何かを感じたんだ。きっと。

 そんな大学4年の夏から、早くも10年が経った。
10年。長かったような短かったような。
この10年間でいろんな人たちといろんな舞台を作ってきた。
楽しかったような、苦しかったような、でも楽しい日々。
タイニイアリスのような小劇場からレストランでの芝居、紀伊國屋ホールにも出演した。
その都度いろんな人たちと共演してきた。そんな彼らにもあったであろう決断の時。
その時、どうして彼らは役者という道を選んだのか。
そして今、どんなものを創りたいと駆り立てられているんだろう?

「芝居って、なんでおもしろいんですかね?」

 そのきっかけ台詞によって、有名な役者さんから俳優のタマゴまで、人にはあまり言わない演技への思いや日常の裏側をこっそり聞いてみたい。
それこそ、「稽古終わりに居酒屋で一杯やりながら」のノリで。
そうして、自分が役者という道を選んだ時に感じてた「何か」を探してみよう。
 役者・演出家・脚本家・音響・照明・制作など、舞台に関わるすべてのみなさん、演劇人の想いを肴に美味しく呑める、「舞台裏居酒屋 しんさん」へいらっしゃいませ!