プロフィール
宇月田麻裕
作家・エッセイスト、開運研究家。ハッピネスファクトリー®代表(http://www.happiness-f.com/)。執筆、テレビ出演、講演、WEB企画プロデュース・監修など幅広い分野で活動。動物をはじめ、恋愛や結婚をテーマにした著作を数多く発表。著書に「心に残るペットと人との感動ドラマ」(学研)ほか。 

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2006年10月27日 (金)
アオムシ編5 夢で見た美しき蝶との出会い

 結婚生活。
 私にとっては、一般の女性が夢に見るような華やかで幸せな結婚生活ではなく、「嫌がらせ」や人の悪意に苦しむ結婚生活だった。
「どうか神様、私をこの世から葬り去ってください」
 毎日そう願っていた。私の頭の中は、いつもそのことばかり。それほど、朝から次の日の朝までの24時間が、自分ではない第三者に支配され、何が起きるかわからない恐怖と苦痛の中にあった。
 警察も24時間守ってくれるわけもなく、心の奥底からやがては身体に至るまで、病魔はその姿を現すようになる。
 過度のストレスからノイローゼ状態になり、それだけではなく言語障害も出てきていた。
「つらい、つらい」
 こんな地獄から脱するには……。
 地獄のほうがまだこの現実より楽かもしれないと思い、地獄に憧れの気持ちを抱くようにさえなった。
 でも、自ら命を絶つことはできない。
「神様から与えられた命を自ら消滅させることは、この世の使命をまっとうできずに逃げ出すことだ」
「きっとこんな私でも、神に生かされているということは、使命がまだ何か残っているのだろう」
「それならば、どんなことが起きようと、命を絶たれるその日まで生きるしかない」
 そうかたくなに考えていた。
 だけれどもその一方、「何で自分だけこんな目に遭うのか?」と別の声が聞こえる。
 自分で、自分の選んだその人生を恨んだ。
 それでも、「自分自身で何とかしなくてはいけない。ここから逃げてはいけない。彼(夫)のことを守って彼の夢を実現させなくてはいけない」と、来る日も来る日も、そう自分に言い聞かせた。彼も日々このことに心を痛めて辛い思いをしていた。だが、彼には栄冠を手に入れることに集中して欲しいという私自身の気持ちがそこに強くあった。たとえば、子供をお受験戦争で勝利してもらいたい母親の気持ちといったらわかりやすいだろうか……。

 私はアオムシからサナギになった唯一の友を見て、いつも思っていた。

「大丈夫! いつかこのサナギが美しい蝶となって、大勢の仲間と一緒に悪いやつらをやっつけてくれるから」

 現実離れした空想だった。
 だが、私にはただそれにすがるしか、生きるすべがなかった。

In_wonderland  そんなある日、不思議な夢を見た。
 あの「ムゴムゴサナギ」が、美しい蝶に変化しているのだ。そして私を乗せて、夢のような(?)場所に連れていってくれた。
 そこは、果てしなく広がる美しい大草原、色とりどりの鮮やかな花畑が広がっている。私を乗せた蝶の仲間たちが自由に飛び回っている。まさにワンダーランドのような場所だ。

「なんて美しいのだろう」
「なんて自由なのだろう」
「こんな世界で生きたい」

 夢の中の私は、彼らと同じように背に大きな羽を背負い、神々しい世界を自由に飛び回っていた。そして言語障害を患っているはずの私が仲間たちと楽しそうに話をしている。
何の縛りもない世界だ。いつしか地獄ではなく、そんな自由で美しい世界に憧れるようになった。
「私にも、こんな未来が待っているのだろうか? 早くそこにいきたい」
 久しぶりに私の身体の中は、幸せで満タンになった。いつまでもいつまでも、その夢が続けばよかったのに……。その夢がさめなければ、彼が私の手を放すことはなかったかもしれないのに……。
 目が覚めた私の目の前には、まだワンダーランドを知らず土の上でムゴムゴ動いているサナギがいた。 


2006年10月23日 (月)
アオムシ編4 ツンツンするとムゴムゴ動くサナギの意志

 こんにちは、マヒロです。
 最近の「どうぶつとにらめっこ」、私の人生の中での特に濃い部分を振り返る形でお話しさせていただいていますが、お楽しみいただけてますか?
 数回、このシリーズを続けてきて思うことがあります。
 それは「あの頃の自分が今の自分を作っているんだ……」ということ。
 おかげさまで、素晴らしい人たちに囲まれ、幸せな日々を過ごしている今。
 人間、本当に無駄な時間や無駄な経験はないものだと改めて感じながら書いています。

 さて、動物たちと私をめぐる奇妙な人生の旅路。
 前回のハムスター編から時間をさかのぼり、私が結婚していた時代に戻ってみましょう。
 またまた、キュートなアオムシ君が登場します。
 私とアオムシ君が、それぞれの生きる道を見出し始めてからのこと……。
 アオムシ編の再開です。

 ※

 結婚をするということは、相手、相手の家族、環境……それらすべてを背負い、受け入れていくということなのかもしれない。もちろん人によって考え方の違いはあるだろうから、私のこの答えが万能の回答だとは思っていない。
 しかし、独身時代の私は想像していなかった。その後の結婚生活が試練の連続になることを。
 次から次へと襲い掛かる難儀な問題、試練。その渦に飲み込まれた私は、毎日のように、自分がこの世にいる存在価値を考えた。
「私は世の中に必要とされていないのではないか、もうこの世での使命は終わったのではないかと……。もしそうならば、神様、私をこの世から葬り去ってください」
 そんな決して抜けることのできない暗く長いトンネルの中で、私は1匹のアオムシを育てるようになる。
 アオムシは、私の心を見透かしてか、なぐさめるように活発に動き回ってくれた。

 ところが、ある朝、アオムシが入れ物の中にいないことに気付く。よく探すと、そのかわりにひとつのサナギを見つけた。
 サナギになったアオムシは、私が見ているときにはほとんど動くこともなく、命の火が消えているのではないかと、ときどき不安になった。
 あまりに心配になったので、指先で軽くツンツン……。
Mugomugo  すると、少しだけムゴムゴと動く。
「なにすんねん~!?」と言わんばかりで何ともかわいらしい。
 私はこの“ムゴムゴ”が大好きで、よくツンツンしていた(おそらく、本人にとっては無理やり起こされて、かなり迷惑なはずだったろう)。
 ただ、この瞬間だけが唯一、私の心が安らぐ時間だった。

 サナギは、自らの意志で土にもぐったり出たりしている。
 私もこの土にもぐっているような真っ暗な世界から、自ら抜け出そうと思えば抜け出せるのか? 徐々にそう思えるようになった。
 アオムシがサナギになるのは、その命が進化している証だ。
 進化。
 私も今の自分から脱皮し、進化することができるのだろうか? 
 できるはずだ。
 太陽の当たる場所にいけるはずだ……。
 しかし、私はそこから動くことができなかった。環境が、私に襲い掛かる嫌がらせや束縛といった問題が、私の脱皮を許してはくれなかった。私は土の中で、覆いかぶさる土を払うために、ただもがいているだけ。
 このときに、土の中からただ出ようとするだけではなく、違う土を求めていくという発想が少しでもあったなら、違う未来が待っていただろうに……。
 そんなある日、サナギとなったアオムシが大きな変化に見舞われたのだ……。

2006年10月11日 (水)
ハムスター編3 ミルクとレモンと私の新たな冒険

 我が家の大切な家族になった「ミルク」と「レモン」。
 性格もそれぞれで、ミルクは人なつっこい甘えん坊。レモンは、ひょうひょうとしていてマイペース。2匹はまるで人間の兄弟のように、ときにはじゃれ合ったり、ときにはケンカすることもあった。
 ひどいケンカのときには、「チュ、チュチュチチュ~!!!」と声を上げてもみあいへしあい……人間の私が仲裁に入ることもあった。ただ、変な止め方をすると、私の手がキケン(ガブッとかまれてしまう)なので軍手着用は必須。
 ケンカの原因は、おおよそクルクル(回し車)の乗車権の奪い合い。まるで、子供が1つしかないおもちゃを取り合って、ケンカしているようなものなのだ。なので、1匹1台にしようと、もう1台のクルクルを買ってケージの中に入れてあげる。
 それからは、ほとんどケンカはなくなり、2台を上手く交互に乗り合ったりして仲良く遊んでいた。少々ペットバカ発言をさせてもらえれば「その姿も愛らし~い!」と大声で叫び知らせたいようなテンションだった。
 そんな2匹は、私によく慣れてくれた。手を差し伸べると、ぴょこりんと乗ってくる。もう、たまらない!!!
 しかし、私にはどうしても腑に落ちない、「このままでいいのだろうか?」と思うことがひとつあった。
 2匹はいつもケージに閉じ込められたままだ。本来ならば、ハムスターの放し飼いは危険なので、ケージの中で生活させたほうがいい。しかし、狭い中に閉じ込めているのは、過去の自分を見ているようで、あまりにも辛かった。
 閉鎖された世界に閉じ込められていた過去の私。出ようとしても、自分の力だけでは決して出ることができなかった、あのころの自分。いや、出ようと思えば出られたのかもしれなかったが……。

「ミルク、レモン。さぁ、自由になりなさい。この広い部屋の中を自由に走り回りなさい」私は2匹にそう語りかけた。

Brother  私は放し飼いをする決心をしてから、2匹が入りそうな隙間はすべてふさいだ。冷蔵庫の下、ソファーの横や下……。15mmの隙間ですら、簡単に入り込んでしまう。いなくなったら大変だ! 準備万端にしてから1匹ずつ手に乗せて部屋に放した。
 最初は、床が滑るせいか、うまく歩くことすらできなかったが、やがてコツをつかんだ2匹は、どこでも自由に走り回れるようになった。
 ケージに戻りたいときには自分で戻り、出たいときにも自分で勝手に出た。ただし、深夜だけは私が自主的に巣に戻すことにした。というのは、寝ぼけた私が、踏んづけてしまう可能性が無きにしも非ずだからだ。しかし、夜になるとケージに戻ることを覚えた2匹は、いつしか自然に深夜になると、自分から戻るようになっていた。

 こうして自由になったハムスター兄弟。昼間は好奇心をムキ出しにして、まるで無人島を探検するかのように、家中でいろんな冒険をしていた。彼らの冒険を見ていると、当たり前のように生活していた部屋にも、いろんな発見が満ちていることに気付く。
 わき目も振らずただまっすぐに走り続けていた自分。それもいいけれど、着眼点を変えたり、寄り道をしてみることで、もっと面白いことができたり、不可能だと思えるようなことも可能になるかもしれない。そうすれば、さらに自分の幅が広がり、もっともっと楽しんで仕事ができるかもしれない。
 感化を受けた私は、著書の企画を考えてみた。離婚をしてからは、すでに一冊の著書が世に出ていたが、「もっと面白いものが書けるはずだ」と自分に言い聞かせ、企画書作りに励んだ。

2006年10月 6日 (金)
ハムスター編2 2匹のハムスターとのたまらなく素敵な関係

 離婚後、占いの仕事を再開し、それが軌道に乗り始めた頃、我が家にやってきた2匹のハムスター。名前は「ミルク」と「レモン」に決まった。
私は、この子たちとの未来を想像した。「この二人と、どんな楽しい思い出が作れるのだろうか」と……。
 しかし、我が家に2匹を迎えたのは、ちょうど冬まっさかり。かなり肌寒かった。
そのせいなのか、それとも彼らが緊張していたせいなのか、ケージの中の巣からまったく顔を出さない。
 まずは原因のひとつである(と思う)寒さ対策をした。廊下から床暖房が効いている部屋に移動をしてみた。それでもまったく顔を出さない。

「なんだよ~! ハムスターって、こんなに自分の世界に引きこもっている生き物なのか。つまらない~(`^´)プンスカ」。

 ん? でもちょっと待てよ。
 引きこもりといえば……。

 よくよく考えると、ミルクとレモンを見ていると、まるでほんの数年前の、結婚生活中の自分を見ているようでもあった。
「そんなところに、引きこもっていないで、ねぇ! 顔を見せてよ。そんな狭いところにいつまでも隠れていちゃダメだよ!」と何度も何度も話しかけた。
 話しかけることで、彼らのいる世界(私の部屋)が安全で幸せに満ちたところであるとアピールしようとしていた。
 私は、ミルクとレモンの親になったとたん、誰かに助けを求めていた存在から、誰かを助けようとしている存在になりつつあることを実感していた。

 ちなみにカフェで決めた名前だが、私は、最初に顔を出したほうに「ミルク」、後から出てきた子に「レモン」と名付けようと決めていた。そのためにも出てくる瞬間を見逃すわけにはいかなかった。
 そして耐久勝負はやがて終わりのときが来た。あるとき、ひょこっと1匹が顔を出した。その瞬間に必然的に2匹の名前が決定した。
「オマエがミルクだよ」と言って、わからなくなる前に、その子のシッポに赤マジックで印をつけた(ちょっと非情!?)。
 ようやく、もう1匹も恐る恐る顔を出した。同じジャンガリアンのノーマルなので、ちょっと見ただけでは見分けがつかなかった。
「よかった! 印を付けておいて」と(やや強引ながら……)安堵した。

Playful  一度顔を出した2匹は、安心したのか、その後わりと外に出てくるようになり、毛づくろいをしたり、一緒にクルクル(回し車)をし始めたりと、徐々にリラックスしてきた様子だ。この様子を見ていると、不思議なほどまったく飽きない!

「もう、何から何まで、可愛すぎ!!!!!!!!!!! これはたまらん!!!」

 目にいれても痛くないというのはこのことだろうか!? 気分はもう、親という第一ステップをすっとばして、愛らしい孫を見るお婆さんになったような感じだった。
 カタツムリも、もちろん可愛い! だが、「この毛の生えた動物が、こんなに可愛いなんて\(◎o◎)/!」初めて味わう感触だった。

 ちなみに、シッポにつけたマジックはすぐに消えた。身体が油性なのだろうか? しかし、数日経ったら、もうマジックがなくてもちゃんと見分けがつくようになっていた。おっとりとした顔つきと性格で、そしてやや毛並みが悪く白っぽい子が「ミルク」。凛々(りり)しい顔つきと性格で、ミルクよりやや黒く毛艶がいい子が「レモン」だ。
 でんでんと暮らしていたときには、私の心に大きく開いた穴が埋まりつつあった。しかし、まだ1ミクロンほどの穴が心に残っていたのかもしれない。そこにこのハムたちがスポッとハマってくれた。これで、まったく、隙間風が通り抜けることができなくなった。
 毎日の日々がもっと楽しいものへと変わっていった。仕事の打ち合わせをしていても、スーパーに買い物にいっていても、この子たちが気になって、早く家に帰りたくなる。この子たちは、私にとって掛け替えのない存在になったのだ。