プロフィール
宇月田麻裕
作家・エッセイスト、開運研究家。ハッピネスファクトリー®代表(http://www.happiness-f.com/)。執筆、テレビ出演、講演、WEB企画プロデュース・監修など幅広い分野で活動。動物をはじめ、恋愛や結婚をテーマにした著作を数多く発表。著書に「心に残るペットと人との感動ドラマ」(学研)ほか。 

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2006年9月28日 (木)
ハムスターのミルク&レモン編1 ミルクとレモンとの出会い

 アオムシ君のかくれんぼから、少しだけ未来に進んだお話。
 アオムシと過ごした時間は、生きるという生気を失っていた日々だった。
 そして「でんでん」と出逢い、過していた日々は、とにかく生きることに必死だった。私の友であり、家族であり、先生でもあった、カタツムリの「でんでん」が総勢120匹の子孫を残していた。
 私はすでに離婚をし、それとともに嫌がらせも影を潜めていた。
 しかし、問題が解決されたわけではなかった。

 肩にドサリと乗っかった離婚後の後始末。
 離婚にともなっての借金の返済を含め、毎月生活に必要な費用は最低でも数十万円はいる。就職情報の本を手にしてアチコチ電話をした。しかし、当時35歳を過ぎていた私が希望額をもらえるところといえば水商売以外は他に見当たらなかった。どうするべきかを考えた私は決心した。
「やはり結婚する前にしていた占いの仕事を再開しよう。もしかしたら、それなら希望額の壁を越えられるかもしれない」。

 しかし、結婚後数年間は、自分の仕事をほとんどしていなかったため、仕事の人脈はすでに途絶えて、世の中にも「宇月田」という存在は忘れられていた。0からとは言わないが、1からの新たなスタートになった。
 とにかく必死に営業から始めた。インターネットで情報を見つけては、アポイントを取って会いにいき、企画や原稿を渡した。偶然、出版社の前を通りがかったとき、アポなしで飛び込み営業をしたこともある。
 営業を回ったとしても、仕事につながる確率は1%に満たなかった。それでも仕事になったときの達成感があるからやり続けられた。とにかく必死に生きようとしていた。他人が見たならば「気が狂った!?」と思うくらい、企画を作っては出版社へと奔走した。
 門前払いなんて当たり前。しかし、それでも過去の辛い体験を乗り越えてきた私は、そう 簡単にくじけない強さを身につけていた。
 そしてある時期を境にして、やればやるほど、おもしろいくらいに成果は出始めた。仕事が決まり始めると、いつしかどんどん入ってくるようになる。何とも不思議な感覚だ。そうなったら今度は執筆に明け暮れた。それでも、いつ仕事が来なくなるかわからない不安があり、営業まわりはやめなかった。

 そんなある日のこと。2匹のハムスターとの出逢いが訪れる。
 ふと気付くと、離婚から4年の歳月が流れていた。仕事三昧の日々は、途切れることなく続いていた。でんでんの子孫のカタツムリたちは、相変わらず私のことを慰めてくれ、勇気を与え続けてくれていた。しかし、ガムシャラに走り、必死な私は、それでも足りないほど潤いをなくしていたのかもしれない。
 ようやく人並みの生活ができるようになったその年、心に寂しさが漂い始めていた。私の心と身体が、自然と潤いを欲していたようだ。
「私には愛する家庭がない。ひとりぽっちだ……」
 この頃からよくペットショップへ通うようになっていた。動物たちを見ているだけで温かい気持ちになれるからだ。しかし、飼うということになると、仕事に必死な私が果たして面倒を見切れるのだろうかと不安になる。そんなある日、週に1度は通っていたであろうそのペットショップに、とっても小さなハムスターたちが入荷した。
Milklemon 「あぁぁぁぁ~♡」
 もう気持ちを抑えられない。衝動が収まらなくなっていた。
「えい! どうにかなるさ」と、勢いで買ってしまった。どうせなら、1匹だと可愛そうだと思い「2匹下さい」と店員さんに言っていた。

 ホント、ものすごく可愛い!!!(^^♪ 
 それが素直な実感だった。毛の生えた動物がこんなに可愛いなんて♪ 
「今日からずっと一緒だよ! よろしくね」
 ちなみに、この子たちの名前はカフェで思いついた。
「アイスティーください」
「レモンとミルクどちらになさいますか?」
……これだ! ピンと来てしまった!!!(^^)v

 幸せと不幸せ、どちらになさいますか?
 神様にそう聞かれるまでもなく、レモンとミルクという新たな家族とでんでんの子孫たちとともに、私はいつしか「本当の幸せ」を選ぼうとしていた。

2006年9月13日 (水)
アオムシ編3 どこへ行ったの? あなたが死んでしまったら……

 アオムシが私の元に迷い込んで数日経った。徐々に青緑から、何となく茶色に変化していた。
「いよいよこの子は蝶になる準備をしているんだ」と私は嬉しい気持ちでいた。
 そんなころ、私の身に次々と不思議な出来事が起きた。

「この人……もしかして……?」
 信号で止まった瞬間にふと見た、横のバイクの上。電車から降りたホーム。スーパーの入り口……。
 目の錯覚ではない。私はやたら気になった。
「なぜ、こんな頻繁に、似た人を見かけるのだろう?」
 それは、私の若いころからの大切な親友のひとりだった。

 それから数日が経ったある日。
「あっ! アオムシがいない~!」
 朝起きるといつもいる土の上にアオムシがいなかった。土を敷き詰めてあった住み家から、忽然と姿を消していたのだ。
「この子がいなくなったら……」
 ……私の希望の灯が消える。
 私は焦った。必死で周囲を捜した。しかし見つからなかった。
 落胆した気持ちの中で、私はふと新聞に目をやった。
 すると新聞で、ある訃報に気付く。
 慌てて、各方面へ確認する。しかし、死んだという事実は変わらなかった。私は驚愕した。

 当時の私は、心身ともに余裕がなく、結婚をしていることもあり、親友に連絡をすることはしなかった。
 その訃報を知る2日前だっただろうか。外出から戻ったとき、窓も開けていないし雨も降っていないのに、部屋にあるベッドがびしょびしょに濡れていたことがあった。
 きっと親友は私に気付いてほしくって、何度も何度も逢いに来てくれたのかもしれない。亡くなった日は、たぶん病院のベッドで汗まみれになって苦しんでいたのだろうか。それで私のベッドもびしょびしょに……。最後の力を振り絞って、私の家に来てくれたに違いない。そう思えてならなかった。
 手元には、親友からもらった遺品だけが残っていた。
 それを見つめながら感じた。「命って、なんて儚(はかな)いんだろう」と。

 私の前から忽然と消えた大事な命。
 もう身近な命を失いたくなかった。アオムシを絶対に見つけると決めた。住み家は家の中に置いてあったのだから、絶対に家の中にいるはずだ。
 この子を失ったら、自分もこの世から消えてしまうような気がした。もちろん、消えてしまう ならば、そのほうが楽かもしれないが……。
 私は、必死に捜した。茶色になりかけたアオムシを。でもいない。

「あなたも死んじゃったら、私はもう、何にもすがることができないのよ。あなたは、私を救ってくれる希望なんだから……。あなたが仲間を連れてきて悪いやつらをやっつけてくれるはずなんだから……」

Kakurennbo  諦めかけたそのとき、「もしかして……」と思い、入れ物の土を指で掘り起こした。すると、「さなぎになったアオムシ」が土の中に隠れていた。

「あぁぁぁ。あなた、こんなところでかくれんぼしてたの?(ToT)」
 アオムシは、何事もなかったかのような顔をして私を見つめ返していた。

「ボク、何か悪いことした~?」
 エヘヘ……していないよ。もういなくならないでね……。

 ひとしきりの涙がとまったころ、アオムシと私は、それぞれ新たな自分になるための準備に入ろうとしていた。

2006年9月 1日 (金)
アオムシ編2 いつか悪いやつらをやっつけてくれる!?

Strange_friendship 「こんなところに迷い込んできてしまって……、私も今迷路の中にいるようなのよ」

 突然迷い込んできたアオムシを見て私がつぶやいたとき、ふと彼との出逢いからの記憶がよみがえってきた。

 1993年6月。私は彼と出会った。彼とは、元ダンナのこと。
 当時の彼は、いつも迷っていた。自分の目指すものがあるのに、それがどんどん遠ざかり、次から次へと試練がやってきていたことに対して……。
 迷い、崖っぷちに立たされている彼の話を聞くたびに、私は、もう一度、華のある世界に戻してあげたいと思った。そして、夢を持っている彼のために力を貸して、それを実現させてあげたいと思い、彼と一緒に生きることを決意した。

 結婚してからは、結婚と仕事の両立のため、起きている時間はほとんどを彼のために使った。そして、彼が就寝した深夜2時から朝6時ごろまでを自分の執筆時間にあてた。そんな毎日だった。
 しかし、それを数ヵ月続けているうちに、自分の限界を感じるようになった。
作品が駄作となっていくのを感じた。睡眠不足と過労とで集中を欠き、いいものができないのだ。
「こんなものを世に発信していては、人々に申し訳ない」
 そう思い、仕事を断念せざるを得なくなった。

 彼と出会う前までの人生は、バンド活動や芸能活動など、自分の夢のために生きてきた。
 そして、「自分という存在が世の中の役に立つように活動する」という目標をもち、それに生きがいや使命を感じていた。
 だが、結婚後は、彼が栄冠を手にするまでは、彼のために自分の人生を費やしてもいいと考えるようになる。彼が闇から抜け出し、華のある世界のトップになる、それが私の目標にもなっていたのだった。
 ただそこに、想像し得ない周囲の人たちから与えられる「恐怖」がなかったなら、まっすぐに夢に向かって走れただろうに……。

 警察からは、「何かあったらいつでも電話してきてください」といわれるものの、その何かがあると手が震え、電話のボタンがまったく押せなくなる。最初の「1」を押すのでも違う番号を押したりして、続けて3つの決まった番号「110」を押すことができない。こんな体験は、今までしたことがなかった。
 毎日、周囲に翻弄される恐怖の日々。
 私は、何のためにこの世に生きているのか。どんどんわからなくなっていった。生きている価値すらも……。

 アオムシはただ私を見つめていた。
「あなたは、何のためにこの世に生まれてきたの?」と聞いてみた。
 答えは何も返ってこなかった。
 でも、アオムシは優しげなまなざしを向けていた。

 アオムシが何をしてくれるわけではない。ただ、私の話を聞いてくれるだけ。それでも、この迷い込んできた虫に、私は自分との共通点が見出される気がした。

ひとりぼっち。

 でも、今はこの子も一緒に、この恐怖の中にいてくれる。
 この子が大きくなって蝶になったとき、仲間を引き連れて、悪いやつらをやっつけてくれる。
 私のために、この子はそこに存在していてくれている。
 そう、思っていたかった。
 今にして思えば、当時は、そんなあり得ないような未来にすがるしかなった。