アオムシ君のかくれんぼから、少しだけ未来に進んだお話。
アオムシと過ごした時間は、生きるという生気を失っていた日々だった。
そして「でんでん」と出逢い、過していた日々は、とにかく生きることに必死だった。私の友であり、家族であり、先生でもあった、カタツムリの「でんでん」が総勢120匹の子孫を残していた。
私はすでに離婚をし、それとともに嫌がらせも影を潜めていた。
しかし、問題が解決されたわけではなかった。
肩にドサリと乗っかった離婚後の後始末。
離婚にともなっての借金の返済を含め、毎月生活に必要な費用は最低でも数十万円はいる。就職情報の本を手にしてアチコチ電話をした。しかし、当時35歳を過ぎていた私が希望額をもらえるところといえば水商売以外は他に見当たらなかった。どうするべきかを考えた私は決心した。
「やはり結婚する前にしていた占いの仕事を再開しよう。もしかしたら、それなら希望額の壁を越えられるかもしれない」。
しかし、結婚後数年間は、自分の仕事をほとんどしていなかったため、仕事の人脈はすでに途絶えて、世の中にも「宇月田」という存在は忘れられていた。0からとは言わないが、1からの新たなスタートになった。
とにかく必死に営業から始めた。インターネットで情報を見つけては、アポイントを取って会いにいき、企画や原稿を渡した。偶然、出版社の前を通りがかったとき、アポなしで飛び込み営業をしたこともある。
営業を回ったとしても、仕事につながる確率は1%に満たなかった。それでも仕事になったときの達成感があるからやり続けられた。とにかく必死に生きようとしていた。他人が見たならば「気が狂った!?」と思うくらい、企画を作っては出版社へと奔走した。
門前払いなんて当たり前。しかし、それでも過去の辛い体験を乗り越えてきた私は、そう 簡単にくじけない強さを身につけていた。
そしてある時期を境にして、やればやるほど、おもしろいくらいに成果は出始めた。仕事が決まり始めると、いつしかどんどん入ってくるようになる。何とも不思議な感覚だ。そうなったら今度は執筆に明け暮れた。それでも、いつ仕事が来なくなるかわからない不安があり、営業まわりはやめなかった。
そんなある日のこと。2匹のハムスターとの出逢いが訪れる。
ふと気付くと、離婚から4年の歳月が流れていた。仕事三昧の日々は、途切れることなく続いていた。でんでんの子孫のカタツムリたちは、相変わらず私のことを慰めてくれ、勇気を与え続けてくれていた。しかし、ガムシャラに走り、必死な私は、それでも足りないほど潤いをなくしていたのかもしれない。
ようやく人並みの生活ができるようになったその年、心に寂しさが漂い始めていた。私の心と身体が、自然と潤いを欲していたようだ。
「私には愛する家庭がない。ひとりぽっちだ……」
この頃からよくペットショップへ通うようになっていた。動物たちを見ているだけで温かい気持ちになれるからだ。しかし、飼うということになると、仕事に必死な私が果たして面倒を見切れるのだろうかと不安になる。そんなある日、週に1度は通っていたであろうそのペットショップに、とっても小さなハムスターたちが入荷した。
「あぁぁぁぁ~♡」
もう気持ちを抑えられない。衝動が収まらなくなっていた。
「えい! どうにかなるさ」と、勢いで買ってしまった。どうせなら、1匹だと可愛そうだと思い「2匹下さい」と店員さんに言っていた。
ホント、ものすごく可愛い!!!(^^♪
それが素直な実感だった。毛の生えた動物がこんなに可愛いなんて♪
「今日からずっと一緒だよ! よろしくね」
ちなみに、この子たちの名前はカフェで思いついた。
「アイスティーください」
「レモンとミルクどちらになさいますか?」
……これだ! ピンと来てしまった!!!(^^)v
幸せと不幸せ、どちらになさいますか?
神様にそう聞かれるまでもなく、レモンとミルクという新たな家族とでんでんの子孫たちとともに、私はいつしか「本当の幸せ」を選ぼうとしていた。


