プロフィール
杉作J太郎
別称・L..L .COOL J太郎。1961年、愛媛県松山市生まれ。本名・杉恭介。漫画家、俳優、コメンテーター、映画監督。男の墓場プロダクション代表。
1982年に漫画家としてデビューして以降、多方面で活躍中。著書多数。

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2006年6月15日 (木)
第15回 初めて部屋に泊めた女 

 これもまた、昔の話だ。
 大昔の部類になる。
 俺が東京に出てきた頃だから、もう30年近く前の話になる。
 俺は世田谷区、桜新町のアパートに住んでいた。
 まだ漫画を描いたりする前のことで、俺はともだちに出演してもらって8ミリ映画を撮っていた。将来に対する希望と不安。なんとかなるだろうという期待より、どうにもならないだろうという諦めのほうが大きかったような気がする。
 
Sugi15  夜中に、玄関をノックする音がした。
  今のように携帯電話があるわけではなく、ともだちが尋ねてくるのも突然ということが当時は当たり前だったので誰かともだちが来たのかと思ってドアを開けたら、見覚えのない若い女性が立っていた。ちなみに、当時、俺にはガールフレンドはおろか、知り合いの女性のひとりいなかったので、女性はすべて見覚えのない女性ということになる。

「となりの○○さんを訪ねてきたんですが」
 彼女は言った。となりの○○さんを俺はまったく知らない。顔ぐらいは知っていた。たぶん俺と同じで学生だろうとは思っていたが、あとのことはまったく知らない。
 訊けば、彼女は立川だか国立だか忘れたが、とにかく、そのあたりから○○さんを訪ねてきた。だが、留守だった。帰ってくるのを待ってるうちに帰りの電車がなくなってしまった。○○さんは帰ってこない。外は寒くなってきた。それで……
「泊めてもらえませんか?」
 彼女は言うのであった。
 ま、今ならファミレスか漫画喫茶にでもいけばいいのだろうが、当時、家の近くにそんなものはなかった。深夜やってる飲み屋も近くにはなく、俺がたまに夜食を食べに行ってたスナックも深夜1時までの営業だった。
  結果から言うと、彼女は俺の部屋の片隅に朝まで座っていた。
 ほとんど会話は弾まなかった。
 俺はずーっと翌日の競馬の予想をしていた。
  初めて俺の部屋にやってきた女性は隣人の彼女だった。
  彼女が帰ったあと、彼女の飲んだコーヒーカップだけが残っていた。
 翌日、馬券が当たったか外れたかは記憶にない。

2006年6月 9日 (金)
第14回 見られてはいけない姿を見られた女

Photo_272  書こうか書くまいか迷ったけど、やっぱり書くことにしました。
 いやー、あれは10年近く前のことになりますかねー。
 新幹線。
 東京に向かうのぼりの車内でそれは起きた。
 つうか、俺は見た。
 見てしまったのだ。
 見てはならないものを。
 俺は見てしまったのだ。

 その少し前にテレビ番組の収録でご一緒した美人女優さんと新幹線の車内でお会いしたのだ。
 俺はひとり。
 向こうはふたり。女性のマネージャーさんが一緒だった。
 お会いしたのが少し前だったので向こうも俺のことを覚えてくれていた。あいさつをして、一言二言お話しして、それぞれの座席に着いた。俺の3つか4つ前の、斜めの席に女優さんとマネージャーさんは座った。夜だったのでグリーン車の車内はすいていて静かだった。
 緩やかに時間は経過する。
 大阪では番組の収録だったので俺も疲れていた。
  ウトウトしはじめた、その瞬間だった!
 外が暗いので窓には車内が反射して映っていた。
 3つか4つ前の席にいる女優さんはすでに眠っているようだった。
 と、そのとなりに座っていたマネージャーさんが!
 この人も美人だった。
 おそらく元は出演する側の仕事をされていたのではないかと思える女性だったのだが、その人が!
  鼻の穴に指を突っ込んで、鼻くそを取り始めたのである!

  見てはならないものを今、俺は見ている!
 そう思った俺は、早くそれをやめてくれないかと祈った。が、彼女は延々と鼻をほじくり続けたのである。
 長い、長い、それは長い時間だった。

 話は以上である。
 今まで、ひとり思い出すことはあっても一度もこの話は誰にもしたことがなかった。

 それぐらい、きつい話である。
 世の中。
 ホントに誰が見ているかわからない。
 誰も見ていないように思っても誰かは見ている。
 それ以来、俺は思うようになった。