プロフィール
杉作J太郎
別称・L..L .COOL J太郎。1961年、愛媛県松山市生まれ。本名・杉恭介。漫画家、俳優、コメンテーター、映画監督。男の墓場プロダクション代表。
1982年に漫画家としてデビューして以降、多方面で活躍中。著書多数。

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2006年8月29日 (火)
最終回・第18回 恐怖スポットへ向かう道中

Hakone_1  部屋のクーラーがブッ壊れてて、暑くて息もできない感じですから、最近は夜になると意味もなく車に乗って出かけるようになった。
 が、なんの意味もなく車を走らせるのもガソリン高騰という観点、あるいは資源を大切にしなければいけないという観点から精神的にキビシイものがあるので、そこへ意味をくっつけたりもするのです。

 というわけで、最近、心霊スポット探検によく出かけています。
 これは次回作のロケハンという意味も含まれますからね。

 で、先日。
 墓場プロの第1期ニューフェイスの伊藤雄一くんを連れて御殿場、箱根を経由して伊豆半島の天城峠に行ってきた。

「ここは出ますよ!」

 某局の女性ディレクターから教えてもらった世にも恐怖のポイントへ深夜に行ってきたわけですが、ま、疲れました。
 疲れすぎて、幽霊が出たのか出なかったのかもわからない。
「あー、こんばんは」
 ふつうに人だと思って挨拶してたりしたかもしれないですねー。

 で、箱根を越えるときに。
 廃車を数週間後に控えた超ウルトラポンコツ車で出かけたもんですから、途中何度もエンジンを休ませねばならない。
 で、寄った箱根のコンビニのレジに女性の店員さんがいた。
 美人というわけでもないが、明るくて気さくな感じだった。
「こんな峠で深夜に女性がレジだなんて、怖くないんですかね」
  たしかに客もめったに来ない山奥なのだ。
 で、俺が外に向けて置いてあったディスプレイ用の漫画本の水着グラビアを眺めてたら、
「あ、読んだらそのあたりに置いててかまわないですよ」
  と言ってくれた。恥ずかしかったので俺は漫画本を置いてすぐ店を出た。
  それから箱根から天城まで何軒かのコンビニに立ち寄ったが、その漫画本はどこにもなかった。週遅れの、すでに返本されている本だったのだ。

 帰り道はもう太陽が高い位置にあった。
 再び、箱根を通った。
 ダメモトで昨夜のコンビニに寄ったら、まだその漫画本はあった。
 6時間ほど経過していたが誰も買わなかったのだ。
 喜びながらレジに持っていったら、昨夜の女性がまだレジにいた。
「おはようございます」
 彼女はニッコリ笑ってくれた。
 素敵な女性との出逢いだった。
 場所はちょうど将来的に第三新東京市(※)ができるあたりである。

※注……『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する都市の名前

2006年8月23日 (水)
第17回 45歳になる

Not_cool  俺も今年の秋で45歳になる。

 ま、さすがにいろいろと可能性は狭まってくる。
 いまからプロ野球の選手になるのは無理だし、サッカーの選手にもなれない。
 いや、そんなの20歳の頃、いや、15歳ぐらいでもう無理だったんじゃないかという気もするが、可能性の問題としてゼロではなかったはずだ。
 どこかで一念発起すればなんとかなったと思うのだ。

 が、別にそもそもなりたかったわけではなかったので、なってないだけの話だ。
 そうですね。
 俺はやっぱり映画製作がしてみたかったですね。
 で、これもやはりゼロからスタートするには気力体力が必要だと思ったので、数年前に崖から飛び降りて死体になったつもりで無理無理スタートしたのだ。

  ま、なんとか1作目と2作目が同時完成しまして、公開もできまして、プラン通りに行けば3作目と4作目が今年最初に白い雪がチラリホラリ舞い落ちる頃には……って早い話が冬になれば、ということですが、同時公開することになっているはずなんですが、作業的にまったく追いつかない!

 年齢なんか気にすることはないじゃないかという気もするのですが。
 昔のフランス映画で、女学生相手に猛烈な恋愛を展開してたマストロヤンニを思い出したりなんかすると。

  でも、やはり気力体力。
 体力気力と順番を前後させたほうが実感ですが。
 これは、やっぱり大問題です。
  そんな意味でいえば数年前、映画製作に着手したのは正解だった。

 今だったらもうできないかもしれないですねー。
 とかなんとか言いながら、やっぱりやることはやるんだとは思いますが。
 ちょこっとマストロヤンニのこと書いたけど、恋愛もまた同じ。
「もうどうでもいいよ、疲れた……」
 とかなんとか言いながら、やっぱりやることはやるんだろうか?

 ま、とりあえず、いま現在。
 部屋のクーラーが壊れているので、もうなんにもやる気がしないです。
 部屋が暑くておかしくなってます!
 夜も昼も寝られません。
 修理の人を呼ぶのも、新しいクーラーを買うのも、部屋が汚くて足の踏み場がなくて実際無理。
 しかたなく仕事場で何日か寝ましたが、体が筋肉痛になってきた。

 今回はまったく色気のない話になりましたが、今年の秋で45歳になる男の生活としては、もうギリギリのところにいますね。

2006年8月 4日 (金)
第16回 なぜ、女は平気でばっくれることができるのであろーか?

Whereisher  これは俺がここ20年以上、ずーっと不思議に思っていることであります。
 1度や2度じゃないんですから。
 5度、6度?
 いや。もっと、ですね。
 3人や4人の話じゃないんですから。
 いやな記憶だから頭の中に留めないようにしてるからアレだけど、10人20人という話だと思いますよ。
 で、これって、俺だけにかぎった話なんすかね、もしかして。

 く~ッ!
 なら書かなきゃよかった。
 とんだ恥さらしであります。
 これはただ単に、モテるモテないの話ではないと思うわけですよ。

 ばっくれてもいい男と。
 ばっくれてはいけない男と。
 それがあるんじゃないですか、女性から見たときに。

  もう20年以上前の話ですが。
 新宿に雪が降っていた。
 俺は彼女とデートをしていた。
  肉体関係はまだない。
 手を握ってもいない。
 夜になってさらに雪が降ってきた。
「ご飯、食べようか」
 みたいなことになった時に。
「ちょっと用事済ませてくるから待ってて」彼女は路地に消えた。
 電信柱の横で俺は待った。
 すぐ戻ると思ったので、どれぐらい時間かかるか聞かなかったけど。
 雪が積もってきた。
 2時間ぐらい待ったよね。
 結局、彼女は帰ってこなかった。
 終電で俺は家に帰った。

 ま、いまもこうして生きているわけだから、その時はモーレツにつらかったと思うけど、なんとか自分の心の中では折り合いをつけたのだろう。

 しばらくして彼女に会ったらケロッとしてた。会って話題に出たのか出なかったか。

 その程度だった。

 携帯電話があったら?
 たぶん電話しても出なかったと思うよ。

2006年6月15日 (木)
第15回 初めて部屋に泊めた女 

 これもまた、昔の話だ。
 大昔の部類になる。
 俺が東京に出てきた頃だから、もう30年近く前の話になる。
 俺は世田谷区、桜新町のアパートに住んでいた。
 まだ漫画を描いたりする前のことで、俺はともだちに出演してもらって8ミリ映画を撮っていた。将来に対する希望と不安。なんとかなるだろうという期待より、どうにもならないだろうという諦めのほうが大きかったような気がする。
 
Sugi15  夜中に、玄関をノックする音がした。
  今のように携帯電話があるわけではなく、ともだちが尋ねてくるのも突然ということが当時は当たり前だったので誰かともだちが来たのかと思ってドアを開けたら、見覚えのない若い女性が立っていた。ちなみに、当時、俺にはガールフレンドはおろか、知り合いの女性のひとりいなかったので、女性はすべて見覚えのない女性ということになる。

「となりの○○さんを訪ねてきたんですが」
 彼女は言った。となりの○○さんを俺はまったく知らない。顔ぐらいは知っていた。たぶん俺と同じで学生だろうとは思っていたが、あとのことはまったく知らない。
 訊けば、彼女は立川だか国立だか忘れたが、とにかく、そのあたりから○○さんを訪ねてきた。だが、留守だった。帰ってくるのを待ってるうちに帰りの電車がなくなってしまった。○○さんは帰ってこない。外は寒くなってきた。それで……
「泊めてもらえませんか?」
 彼女は言うのであった。
 ま、今ならファミレスか漫画喫茶にでもいけばいいのだろうが、当時、家の近くにそんなものはなかった。深夜やってる飲み屋も近くにはなく、俺がたまに夜食を食べに行ってたスナックも深夜1時までの営業だった。
  結果から言うと、彼女は俺の部屋の片隅に朝まで座っていた。
 ほとんど会話は弾まなかった。
 俺はずーっと翌日の競馬の予想をしていた。
  初めて俺の部屋にやってきた女性は隣人の彼女だった。
  彼女が帰ったあと、彼女の飲んだコーヒーカップだけが残っていた。
 翌日、馬券が当たったか外れたかは記憶にない。

2006年6月 9日 (金)
第14回 見られてはいけない姿を見られた女

Photo_272  書こうか書くまいか迷ったけど、やっぱり書くことにしました。
 いやー、あれは10年近く前のことになりますかねー。
 新幹線。
 東京に向かうのぼりの車内でそれは起きた。
 つうか、俺は見た。
 見てしまったのだ。
 見てはならないものを。
 俺は見てしまったのだ。

 その少し前にテレビ番組の収録でご一緒した美人女優さんと新幹線の車内でお会いしたのだ。
 俺はひとり。
 向こうはふたり。女性のマネージャーさんが一緒だった。
 お会いしたのが少し前だったので向こうも俺のことを覚えてくれていた。あいさつをして、一言二言お話しして、それぞれの座席に着いた。俺の3つか4つ前の、斜めの席に女優さんとマネージャーさんは座った。夜だったのでグリーン車の車内はすいていて静かだった。
 緩やかに時間は経過する。
 大阪では番組の収録だったので俺も疲れていた。
  ウトウトしはじめた、その瞬間だった!
 外が暗いので窓には車内が反射して映っていた。
 3つか4つ前の席にいる女優さんはすでに眠っているようだった。
 と、そのとなりに座っていたマネージャーさんが!
 この人も美人だった。
 おそらく元は出演する側の仕事をされていたのではないかと思える女性だったのだが、その人が!
  鼻の穴に指を突っ込んで、鼻くそを取り始めたのである!

  見てはならないものを今、俺は見ている!
 そう思った俺は、早くそれをやめてくれないかと祈った。が、彼女は延々と鼻をほじくり続けたのである。
 長い、長い、それは長い時間だった。

 話は以上である。
 今まで、ひとり思い出すことはあっても一度もこの話は誰にもしたことがなかった。

 それぐらい、きつい話である。
 世の中。
 ホントに誰が見ているかわからない。
 誰も見ていないように思っても誰かは見ている。
 それ以来、俺は思うようになった。