プロフィール
水野晴郎
映画批評家、監督、脚本家、作家、作詞家、演技者、大学教授。1931年生まれ。39歳の時日本テレビの映画番組の解説者を務めて以来、映画批評家として立つ。1996年、初めて監督・脚本を務めた映画「シベリア超特急」は若者を中心に熱狂的な人気を博す。

2009年12月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
アーカイブ
最近のトラックバック
最近のコメント

« 2006年7月 | メイン | 2006年10月 »

2006年8月23日 (水)
佐伯大尉の巻

Captainsaeki 「シべリア超特急」シリーズを考える上で忘れる事ができないのは、西田和昭扮する佐伯大尉の存在だろう。

 第1・2・3・4・5・7作はもちろん、完結篇となる6作ももちろん大尉役で大活躍する。

「え? 第2作では佐伯大尉はコント山口君と竹田君の竹田君が演じていて西田さんは出ていませんでしたよ」とおっしゃる方が結構多い。

 いやいや何と彼が出演しているバージョンがあるのだ。これは近々発表される廉価版DVDにそのバージョンが収録されているのでぜひ、ご覧いただきたい。
 このバージョンでは第7作と同様、竹田君と二人の佐伯大尉が登場することになっており……。まあ、それはご覧になってのお楽しみ。

 さて、撮影中も彼は演技者というだけでなく、さまざまなアイデアを監督の私に出してくれる。
 例えば第5作の時に、関東軍の陰謀とシナリオには出ているのだが、彼の意見だと関東軍全員が好戦派だったのではない、一部の急進派が突っ走ったのでは……との論理である。 私もその通りだと思う。早速「関東軍一部好戦派」とセリフを変えた。

 

また山下将軍は人の命を大切にする人だからという彼の意見で、列車から落ちていく山下将軍の命を狙いに来た女スパイの手を、閣下が一瞬にぎることに決着。もちろん彼女の手は残念ながらすべり落ちてしまう。しかし、閣下の気持ちは充分伝わるのだ。

Kakkas_lunch  アクションもそうだ。走る列車の屋根の上での決闘、格闘シーンが何回か出てくるが、自分自身で、スタントなしで見せている。
 特に第1作の時の列車の屋根は大変高いものだった。ゴールドストーンという男との命をかけた決闘である。二人共、猛熱演でやってくれたがハラハラであった。

 また彼は、例によって明るい性格だからスタジオ中に笑いをふりまく。ちょっとライトチェンジがあるとその間に抜けて、他のスタジオに行って笑いをふりまいている。
 第5作の時には彼がいなくなって、岡田眞澄さんが怒り出して、みんなが逆に笑い出したエピソードもなつかしい。
 完結篇で彼は凄いアクションをすることになっている。がんばってほしいと思う。

2006年8月 8日 (火)
今をときめく女優 ~寺島しのぶ~

Sibechoallstars  今をときめく女優といえば寺島しのぶであろう。

 映画にTVに舞台にとひっぱりだこの彼女だが、彼女を映画の世界にひっぱったのは誰であろうこの私である。
 実はあまり知られていないが『シベリア超特急2』が彼女の映画デビューなのである。

 当時、彼女は舞台の方では認められており、有能かつ熟演型の女優としてぐんぐん名声を高めていた。
 しかし映画で使おうとする人はほとんどなく、映画界では無名だった。

 私は映画評論の一方で、演劇評論をやっているので『近松心中物語』や『マッチ売りの少女』といった彼女の舞台をよくみていた。
 父は尾上菊五郎、母は富司純子という名優の血をひいた、優秀なDNAの持ち主。そんな才能をほうっておくことはない。

 最近の大手映画会社はぽっと出の、演技もろくにできないタレントを並べ、ホラーばかり作って持っていけばよろこんで配給する。バカじゃないか。
 映画を支えるのは一つには役者の力。
 それが一つの柱となって枝がつき、華麗な花が咲くのだ。

 私は彼女をピックアップして大女優たちと並べた。大物女優の間に彼女が入れば、若さでぐんと全体が盛り上がる。
 『シベリア超特急2』は、まさに私の計算通りだった。ただ一つ心残りなのは、しのぶさんにもっと見せ場を作るべきだったということだ。

 たしかに山下閣下に自害を迫るあたりは見事だが、伯爵夫人役の加茂さくらさんと見せる芝居では、彼女の熱演がもう一つ鮮烈に浮き上がってこなかった。
加茂さんの見せ場を、しのぶさんに任せていたらどうなっていただろうかと、いまだに頭の中をよぎる事がある。

 それにしても今見事に花開いたしのぶさんを見るにつけ、私は鼻が高い。

<写真>
左から、尾上松也さん、長門裕之さん、私、光本幸子さん、寺島しのぶさん