『シベリア超特急3』で三田佳子を主演に選んだ時、私の心に秘めた初恋の思い出にも似た感情がこもっていた。
かつて彼女が東映のニューフェイスとして映画デビューしたころ。
彼女の映画を数本見て、その新鮮な個性と、若いが堂々とした演技力に私は注目した。
当時「映画評論」や「キネマ旬報」「映画芸術」「シナリオ」といった映画雑誌に批評を書かせていただいていた。早速、その一つ一つで彼女の映画を取り上げ、彼女についての演技論をさまざまに書いた。
当時若い我々新進の批評家は競って新しい才能を発見し、その芽を育てた。深作欣二監督の反逆精神を最初に取り上げたのも私だ。
そして、加藤泰監督の才能と技術を最初に紹介したのも私である。
残念ながら、今の映画評論家(私に云わせると映画評判家)達にその気迫はない。
ひたすら宣伝部からお金をもらった映画を持ち上げたり、新しい芽を叩きつぶす様にけなして話題をとるのが精一杯。
当時の我々には作家を育て、女優・男優たちをペンで育てる生き甲斐があった。
市田ひろみ、北沢典子、池内淳子、香川京子、若尾文子など、すばらしい才能が続々と登場していた時期だったから、というのも勿論ある。
三田佳子と知り合ったのは、そんな関係からだった。彼女が加藤泰監督と大スタア大川橋蔵に名指しでヒロインに選ばれ、京都撮影所に行く事になった時、銀座のお寿司屋さんで送別会を開いた。お母さんがご一緒だった。
年うつり、彼女は事情があって芸能活動をやめ、しばらく時が流れた。私はそんな彼女にもう一度がんばらねばダメだと、口説きに口説いた。ご主人の助言もあって彼女は決意した。
そしてすばらしい演技を見せ、芸能界で再び次々といい仕事の声がかかり活躍をはじめた。
『シベリア超特急3』の裏には、そんな私の秘めた深い深い思い出がある。

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