プロフィール
水野晴郎
映画批評家、監督、脚本家、作家、作詞家、演技者、大学教授。1931年生まれ。39歳の時日本テレビの映画番組の解説者を務めて以来、映画批評家として立つ。1996年、初めて監督・脚本を務めた映画「シベリア超特急」は若者を中心に熱狂的な人気を博す。

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2006年5月25日 (木)
『シベ超』と一緒に味わって欲しい「ミス・マープル」

_in__1 『シベリア超特急』に様々な共通性を持つ数々の映画がDVDとして発売されている。
 例えば、アガサ・クリスティ原作のミス・マープルを主人公とした作品群。
 日本未公開作品だが、ワーナーホームビデオから発売される。これは拾いものだよ。
 このシリーズの主人公はイギリスの田舎町、セント・メアリー・ミードに住む、ごく平凡な老嬢ミス・マープル。彼女は何とも好奇心の強い女性で、殺人事件の真相推理が大好き。しかしお年がお年なので、若く親しい女性を現場に乗り込ませ、そこから得た情報を元に、裁判で見事な推理を展開していくのである。
 今回、ワーナーホームビデオから、どどっとシリーズ全部が発売されたのは、マーガレット・ラザフォード主演のミス・マープルである。
 このシリーズは、ラザフォードの個性を活かして、人を頼らずミス・マープルが自ら敵地に乗り込んでいく。
 クリスティの原作から思うと大胆な脚色だが、これはこれでまた面白い。
 更に面白いのは、その演出。全作通して同じ監督であるが、。例えば、お互いの心の動きを表現する時、必ずパンフォーカスを使い、一人の表情と奥の人物の表情両方にピントを合わせピタッととらえる。
 また鏡を使うシーンが数多いのも特徴。決して大きな鏡ではないのだが、彼女が室内にいると、これもパンフォーカスでドアから入って来る人の姿ピタリととらえ、横の鏡に映し出すという手法で同一画面に収める。
 また、楽屋にいる彼女が殺人者の気配を感じて上の鏡で彼の姿をとらえ、彼女が下をむいていても光の屈折でわかるという演出など、私の『シベリア超特急』シリーズで使っている演出手法と同じなので嬉しくなってしまった。もちろん、未公開作品だから私は初見である。
 やられたと思ったのは並走する列車のブラインドがポンとあき、首をしめられている女性が見えるところ。もちろん首をしめている者は不明。
 このブラインドが上がるタイミングの良さに拍手を送ってしまった。
 私の『シベリア超特急3』、『シベリア超特急5』の中でも、並走する列車で殺人事件の鍵となるシーンが登場する。このあたりはぜひ、見比べていただきたい。
 特に、『シベリア超特急3』では、老婦人が山下将軍に殺人事件を教える重要なシーンが並走列車を舞台に演じられ、ファンの中でも大変人気となった。
 そういうこともあり、舞台での『シベリア超特急7』で、再びこの老婦人役のインゲ・ムラタさんが、やはり山下将軍に殺人事件を教えるという役で登場した際には、大喝采を浴びる事となったのである。
 今回は、共通性を持つ作品として「ミス・マープル」シリーズをご紹介したが、そのほかにも、ヒッチコックや、ウイリアム・ワイラーなど、『シベリア超特急』と共通性のある作品がDVDで登場している。
 このあたりもぜひ、見比べて楽しんでもらいたい。

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