2005年12月10日 (土)
シベリア超特急 おもしろ話1
助監督がセットしていた撮影状況を、私が完全に変えた例が2つあった。
一つは影の使い方。廊下の端に佐伯大尉がいる。奥の方から山下将軍が出てくる。扉は大尉から45度の角度に向かって開くから、ドアを開けた時に当然、45度向こうに光が当たる。
助監督は、その角度にライティングの指示をしていた。
私は完全にそれを直した。佐伯大尉に光が当たる演出に変えたのである。
リアリズムに凝り固まれば、そんな方向に光が当たる筈はない。しかしこれは映画なのである。映画は基本的に光と影の芸術だ。光を面白く効果的に使うことが映画を面白くする。
これはオーソン・ウェルズが関わった『市民ケーン』(1941年)、『謎のストレンジャー』(1946年)、『上海からきた女』(1948年)、『第三の男』(1949年)、『黒い罠』(1958年)といった映画から学んだことである。
映画の世界は現実とは違っていい。光と影を面白く使うことで映像が躍動する。
もう一つ。草笛光子と中村福助がタンゴを踊るシーン。
ドラマチックにいかねばと助監督とキャメラマンはバストショットを考えていた。
私の指示は違った。全身を撮る。フルショットである。
ダンスシーンに足が映らなくって何のダンスか。
ジーン・ケリーやフレッド・アステアの映画は絶対フルショットだった。足の運び腰の動きがダンスだけではない。2人の心理を語るのだ。
だから映画は面白い。

