プロフィール
水野晴郎
映画批評家、監督、脚本家、作家、作詞家、演技者、大学教授。1931年生まれ。39歳の時日本テレビの映画番組の解説者を務めて以来、映画批評家として立つ。1996年、初めて監督・脚本を務めた映画「シベリア超特急」は若者を中心に熱狂的な人気を博す。

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2005年12月26日 (月)
シベリア超特急 おもしろ話3

Mizuno1226psd_1_1  いよいよ「シベ超祭り」のクライマックスがやってきた。
2005年のラストをかざる12月30日、31日の2日間、VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズという日本一の大劇場で2日にわたってオ-ルナイト。
しかもこの日を最後にこの作品の「シベ超祭り」はもう二度と行われない。

すなわち最後の「シベ超祭り」。

 それだけに30日はスペシャルトークショー、今まで話をしなかった激烈映画界批判や特別ゲストの登場、“未公開映像”大公開という豪華さ。
 その中でも“未公開映像”はただの映像じゃない。いわば“暴露映像”。
 他じゃ決して見られない、私のアメリカでの警察官時代の映像や、20数年前の懐かしい掘り出しものの映像をたっぷりとおみせします。
 そして31日は遂に生芝居『シベ超忠臣蔵』が見られるのだ。

 これは凄いゾ。

 あの三大名作歌舞伎の一本と言われる「忠臣蔵」をシベ超の世界に重ねてオフ・ブロードウェイのスタイルで上演する。きっとドキドキ・ハラハラ、そして大爆笑間違いなし。
 あの有名な『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』や、『コーラス・ライン』もオフ・ブロードウェイが大ヒットしたものである。この『シベ超忠臣蔵』も日本中で話題になるに違いない。
 誰がどんな役をやるのか、どんな物語になるのか、まあ、ご覧になるまでのお楽しみ。

 これがラストになるというのは、いよいよ近々、映画『シベリア超特急 ファイナル<旅路>』が撮影に入るからだ。
その内容も、アッと驚くキャストの話も12月30日、31日にお話いたしますゾ。

2005年12月16日 (金)
シベリア超特急 おもしろ話2

Mizuno_1_1_1  映画『シベリア超特急2』で楽しかったのは大女優たちとの競演であろう。

 淡島千景、草笛光子、光本幸子、加茂さくら、二宮さよ子。そして、この作品が映画デビューとなった寺島しのぶ、須藤温子。デビューといえば歌舞伎の名女形、中村福助、尾上松也も映画初出演。

 嬉しいのは彼らがこの映画に出たことによって、映画やTVの仕事が俄然増えていること。 実は、業界の人々の中にこの映画ファンの方が実に大勢いるのである。嬉しいことだが彼らがこの作品を見て、スターたちを次々とキャスティングするのである。

 私としては、彼らが多忙なだけ嬉しい。ギャラは安くお願いしているが、長い間舞台出演ばかりだった彼等彼女等がスクリーン上でしばしば姿を見せてくれるのは喜ばしい限りである。

 それと同時に、新人やこの映画でデビューした人たちが、いい仕事をしてくれるのは、ベテランにかこまれた新人たちが、ベテランのチャームから様々なことを学び、大きくなってくれることである。

 新人だった須藤温子は「なごり雪」のヒロイン。寺島しのぶはアカデミー受賞女優となり、中村福助は「娘道成寺 蛇炎の恋」で名演をみせ、尾上松也は歌舞伎界のホープとなった。

 悪役だったが長門裕之の活躍ぶりはここで言うまでもない。
 楽しいことである。

注目! 「シベ超祭り」開催情報!!
「シベ超祭り IN VIRGIN TOHO シネマズ六本木」
12/30(金)22:00~ 年忘れ!シベ超祭りNIGHT
12/31(土)22:00~ シベ超祭りゆく年くる年NIGHT
チケット発売情報、イベント内容など、詳しくは

http://www.mizunoharuo.com/ まで

2005年12月10日 (土)
シベリア超特急 おもしろ話1

Photo_29  映画『シベリア超特急2』の裏話をひとつ。

 助監督がセットしていた撮影状況を、私が完全に変えた例が2つあった。

 一つは影の使い方。廊下の端に佐伯大尉がいる。奥の方から山下将軍が出てくる。扉は大尉から45度の角度に向かって開くから、ドアを開けた時に当然、45度向こうに光が当たる。

 助監督は、その角度にライティングの指示をしていた。
 私は完全にそれを直した。佐伯大尉に光が当たる演出に変えたのである。
 リアリズムに凝り固まれば、そんな方向に光が当たる筈はない。しかしこれは映画なのである。映画は基本的に光と影の芸術だ。光を面白く効果的に使うことが映画を面白くする。

 これはオーソン・ウェルズが関わった『市民ケーン』(1941年)、『謎のストレンジャー』(1946年)、『上海からきた女』(1948年)、『第三の男』(1949年)、『黒い罠』(1958年)といった映画から学んだことである。
 映画の世界は現実とは違っていい。光と影を面白く使うことで映像が躍動する。

 もう一つ。草笛光子と中村福助がタンゴを踊るシーン。
ドラマチックにいかねばと助監督とキャメラマンはバストショットを考えていた。
私の指示は違った。全身を撮る。フルショットである。
ダンスシーンに足が映らなくって何のダンスか。
ジーン・ケリーやフレッド・アステアの映画は絶対フルショットだった。足の運び腰の動きがダンスだけではない。2人の心理を語るのだ。

 だから映画は面白い。

2005年12月 1日 (木)
いやあ『シベ超(シベリア超特急)』って本当にいいものですね。

01_28  「シベリア超特急」シリーズが生まれたのは、もう12年前。

 急に映画監督をやることになり、素材を考えていた時、軍人でありながら平和主義者で、中国との戦争を一刻も早く終わらせて友好関係を結ばなければいけないと強くとなえた山下奉文(ともゆき)陸軍大将の事を知ったのである。

 彼を主人公に映画を撮ってみたい。私はそう念願した。

 更に私はミステリー作家アガサ・クリスティーが大好きで、ミステリー作品にしてみようかと考えた。

 そこから生まれたのが、「シベリア超特急」である。

 山下将軍の性格付けは、ミス・マープルにし、いわゆるベッド・ディテクティブに仕上げた。本人は動かないが、周辺人物が活動し、情報を集める。それを将軍が解いて行く。こうして「シベリア超特急」は形づくられた。

 情報収集役として、将軍付の佐伯大尉を設定。

 市川崑監督のサジェスチョン「ちょっぴりおっちょこちょいの人物を傍らにつけると面白くなる」によって佐伯大尉がつくられた。「金田一耕助」シリーズの警部のような存在である。それだけではつまらないので、彼の特技としてロープ投げの名人にした。
 こうして、生まれた第1作だが、私の意図が批評家たちにわかってもらえず、さんざんの悪評だった。
 しかし、私には自信があった。3、4年たてば必ず理解される!

 最初に火をつけてくれたのは、ナンシー関さん、みうらじゅんさんの2人だった。「これは面白い」そう評価してくれたのだ。
 こうしてサブカル系の人々の間に噂が広まり、やがてそれは一般の人々に広まっていった。
 ビデオがぐんぐん売り上げを伸ばした。ここで続編を作ろうと決心した。
 この映画に続編が出来た。その事だけで話題になった。
 大入りだった。
 劇場は長蛇の列。となりの劇場で「1」を上映し、これも満員。

 「2」は、「1」とは違うシチュエーションにしたかった。ホテルでの密室殺人にした。私が少年時代から憧れていた大スターにお願いして大女優を並べた。
 明治座100周年記念みたいだという人もいた。しかしこれほどの大スターを今並べられる日本映画があるか?
 「3」は船上のミステリーにした。三田佳子、宇津井健という大スターの共演だ。
 そして最新作の「5」は、全篇これ連続アクション(ちなみに「4」は2003年シアターアプルで1日だけ上映された幻の作品)。
 シリーズを通しての一つの自慢は、私の映画でデビューして売り出したスターがズラリといること。
 寺島しのぶ、大塚ちひろ、須藤温子、中村福助、片岡愛之助、片岡進之介、大浦みずき。
それぞれの分野で今や大活躍。嬉しい限りである。

今後も、このように「シベリア超特急」の撮影秘話、や、アイディアのねた元のこと、などなど、「シベ超」を中心にそこから連想されるさまざまなことを綴っていこうと思う。
皆さん、しばらくお付き合い願いたい。