プロフィール
水野晴郎
映画批評家、監督、脚本家、作家、作詞家、演技者、大学教授。1931年生まれ。39歳の時日本テレビの映画番組の解説者を務めて以来、映画批評家として立つ。1996年、初めて監督・脚本を務めた映画「シベリア超特急」は若者を中心に熱狂的な人気を博す。

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2006年10月16日 (月)
最終回・シベ超よ永遠なれ

Mike_as_general_yamashita_1  さあ、いよいよ『シベリア超特急・完結編』を撮影することに決定した。
 題して「旅路」。

 山下奉文の少年時代から、オーストリア大使館で駐在武官をしていた当時の激しい恋と満州事変による別離。そしてシベリア超特急での再会。さらに彼女が何者かに誘拐され、超特急をおりる事のできない山下将軍の知能プレイと佐伯大尉の命をかけた大アクションで彼女をすくいだそうとするのだが……。

 やがてその後彼は、フィリッピン戦線へ最後の切り札として送られ終戦を迎える。
 悲劇の将軍としてのクライマックス。ラストは後に結婚した奥さんの悲しくも素晴らしい戦争批判の言葉で終わる。
 このラストは絶対涙々のENDになる。台本を読んだ人がみんなそう語ってくれる。

 さあ、この大河ロマンを彩るスター。これが現在の日本映画でこれだけのスターがつどう映画はまず無いだろうというだけのキャストを組む。

 

想定キャストは、山本五十六長官に北野武。牛島将軍に千葉真一。オーストリアで山下将軍を迎える伯爵夫人が京マチ子。ドクターが淡島千景。ソ連の日本大使館書記官が片岡孝太郎。若き日の山下を恋するのが汐風幸。二人とも名優片岡仁左衛門の令息と令嬢だ。 
 歌舞伎や宝塚で実力発揮の大スターで、若き日の山下が21世紀歌舞伎のホープ、市川猿弥。イタリア大使夫人が有馬稲子。李香蘭がかたせ梨乃。山下夫人が三田佳子。中国レジスタンスが小川眞由美。再会する恋人が司葉子。リンリンが草笛光子。男爵夫人が寺島しのぶ。
 さあこれだけのキャストを誰が集められる。
 結果をどうぞお楽しみに。

2006年10月12日 (木)
シベ超名優・盟友観

Mike_in_yokohama  最近の映画宣伝にもの申したい事は山ほどある。

 たとえば、洋画の、特にメジャー・スタジオの日本支社の宣伝部。
 試写の始まる前に新入りの女の子がメモを読みながらおよそ心のこもらない調子で「この映画は××封切、劇場は××にてロードショーされます。上映時間は××分です。ごゆっくりご覧下さい」といって映写室に合図を出す。しかし、小さな声なので聞き取れない。
 かつては、宣伝部長みずから試写のあいさつには出て来たものである。

 だから私が宣伝部長だった頃もあいさつはかかさなかった。今は宣伝部長さえマスコミの人々は知らない。

 その意識。時は流れ、時代は変わっても同じ大切な事だと思う。
 「シベリア超特急」シリーズの試写の場合は、必ず私が毎回あいさつをした。そして監督として脚本家としても自分の思い、さらに裏話などを必ずお話させていただいた。マスコミの皆さんも本当に温かく拍手をしてくださり、映画の上映後も拍手を下さった。本当にありがたいことだと思う。

 さて、話はかわって、以前“シベ超”に出演願った女優達を紹介したが、今回は男優をご紹介したい。

宇津井健さんには『シベリア超特急3』にご出演願った。彼も久しぶりの映画という事で大熱演。見事私の期待に応えてくれた。
宇津井さんに一番驚かされたのは、撮影中に照明用の重りを使って腕立て伏せをするなど、常にトレーニングを重ねていた事。これには私も脱帽だった。私と同じ年の彼、元気である。出演以来、ぐんぐんTVや映画、CMのなどでご活躍。嬉しい限りである。

 男の役者と言えば、第一作の菊池孝典(現・隆則)君。今は自分の劇団をもってがんばっているが、時々TVのサスペンス・ドラマでも活躍中。ぜひ『シベリア超特急1』のときのような二枚目の役で完結編に出てもらおうかと思っている。

 最後に『シベリア超特急2』『シベリア超特急5』に出演いただいた歌舞伎の名女形、中村福助さん。
 今や日本一の実力の彼は『シベ超』大好き。完結編にもぜひ出たいと言ってくれた。ぜひスペイン大使館書記官として登場してもらおうと思う。『2』の再現だ。

 シベ超は女優ばかりじゃない。男優達も凄いゾ。ご注目あれ。

2006年8月23日 (水)
佐伯大尉の巻

Captainsaeki 「シべリア超特急」シリーズを考える上で忘れる事ができないのは、西田和昭扮する佐伯大尉の存在だろう。

 第1・2・3・4・5・7作はもちろん、完結篇となる6作ももちろん大尉役で大活躍する。

「え? 第2作では佐伯大尉はコント山口君と竹田君の竹田君が演じていて西田さんは出ていませんでしたよ」とおっしゃる方が結構多い。

 いやいや何と彼が出演しているバージョンがあるのだ。これは近々発表される廉価版DVDにそのバージョンが収録されているのでぜひ、ご覧いただきたい。
 このバージョンでは第7作と同様、竹田君と二人の佐伯大尉が登場することになっており……。まあ、それはご覧になってのお楽しみ。

 さて、撮影中も彼は演技者というだけでなく、さまざまなアイデアを監督の私に出してくれる。
 例えば第5作の時に、関東軍の陰謀とシナリオには出ているのだが、彼の意見だと関東軍全員が好戦派だったのではない、一部の急進派が突っ走ったのでは……との論理である。 私もその通りだと思う。早速「関東軍一部好戦派」とセリフを変えた。

 

また山下将軍は人の命を大切にする人だからという彼の意見で、列車から落ちていく山下将軍の命を狙いに来た女スパイの手を、閣下が一瞬にぎることに決着。もちろん彼女の手は残念ながらすべり落ちてしまう。しかし、閣下の気持ちは充分伝わるのだ。

Kakkas_lunch  アクションもそうだ。走る列車の屋根の上での決闘、格闘シーンが何回か出てくるが、自分自身で、スタントなしで見せている。
 特に第1作の時の列車の屋根は大変高いものだった。ゴールドストーンという男との命をかけた決闘である。二人共、猛熱演でやってくれたがハラハラであった。

 また彼は、例によって明るい性格だからスタジオ中に笑いをふりまく。ちょっとライトチェンジがあるとその間に抜けて、他のスタジオに行って笑いをふりまいている。
 第5作の時には彼がいなくなって、岡田眞澄さんが怒り出して、みんなが逆に笑い出したエピソードもなつかしい。
 完結篇で彼は凄いアクションをすることになっている。がんばってほしいと思う。

2006年8月 8日 (火)
今をときめく女優 ~寺島しのぶ~

Sibechoallstars  今をときめく女優といえば寺島しのぶであろう。

 映画にTVに舞台にとひっぱりだこの彼女だが、彼女を映画の世界にひっぱったのは誰であろうこの私である。
 実はあまり知られていないが『シベリア超特急2』が彼女の映画デビューなのである。

 当時、彼女は舞台の方では認められており、有能かつ熟演型の女優としてぐんぐん名声を高めていた。
 しかし映画で使おうとする人はほとんどなく、映画界では無名だった。

 私は映画評論の一方で、演劇評論をやっているので『近松心中物語』や『マッチ売りの少女』といった彼女の舞台をよくみていた。
 父は尾上菊五郎、母は富司純子という名優の血をひいた、優秀なDNAの持ち主。そんな才能をほうっておくことはない。

 最近の大手映画会社はぽっと出の、演技もろくにできないタレントを並べ、ホラーばかり作って持っていけばよろこんで配給する。バカじゃないか。
 映画を支えるのは一つには役者の力。
 それが一つの柱となって枝がつき、華麗な花が咲くのだ。

 私は彼女をピックアップして大女優たちと並べた。大物女優の間に彼女が入れば、若さでぐんと全体が盛り上がる。
 『シベリア超特急2』は、まさに私の計算通りだった。ただ一つ心残りなのは、しのぶさんにもっと見せ場を作るべきだったということだ。

 たしかに山下閣下に自害を迫るあたりは見事だが、伯爵夫人役の加茂さくらさんと見せる芝居では、彼女の熱演がもう一つ鮮烈に浮き上がってこなかった。
加茂さんの見せ場を、しのぶさんに任せていたらどうなっていただろうかと、いまだに頭の中をよぎる事がある。

 それにしても今見事に花開いたしのぶさんを見るにつけ、私は鼻が高い。

<写真>
左から、尾上松也さん、長門裕之さん、私、光本幸子さん、寺島しのぶさん

2006年7月14日 (金)
正に大女優! 淡島千景

 『シベリア超特急2』でご一緒した淡島千景さんはすばらしい女優である。
 もちろん彼女をキャスティングしたのは私である。
 なにゆえか?

 私が少年時代にみた『てんやわんや』という松竹映画。監督は風俗喜劇を撮らせたら当時No.1と云われた渋谷実。この映画がこの監督を不調時代から抜け出させ、渋谷監督は巨匠として『本日休診』、『自由学校』『やっさもっさ』などを発表していく。

 この『てんやわんや』で映画デビューしたのが淡島千景だった。宝塚の舞台で戦後第1回の宝塚ブームを巻き起こしたスターである。久慈あさみや乙羽信子と絢爛たる一時を重ねた。

Doctor_saeki_ 淡島千景は松竹へスカウトされ、久慈あさみは新東宝へ、乙羽信子は大映へと別々の道を歩んだ。淡島は渋谷に、久慈は市川崑と、乙羽は新藤兼人とめぐり逢うことになる。
 淡島千景は『てんやわんや』でパチンコ台を前にテンポの早い踊りと唄をご披露し、私達のどぎもを抜いた。

 当時松竹大船では高峰三枝子、木暮実千代、高杉早苗、別格として高峰秀子、更に水戸光子、田中絹代が君臨していた。しかし、やがて淡島の後を追って有馬稲子、岡田茉莉子、高千穂ひづる達が入社し、松竹の女優地図があきらかに大きく変わっていったのである。
 その中でも淡島千景はヌきんでて抜きん出ていた。以来、映画界の中枢で活躍し、さらに舞台経験を存分につんで演技を磨きこんできた。

 『シベリア超特急2』でのファーストシーンの長廻しで、私は憧れの淡島さんとセリフを交わしながら登場するシーンがあった。私の胸は何年振りかに再会したような思いで興奮した。そのせいからか私がちょっとセリフミスをしてしまったのだが、彼女は私のミスをサラッとカバーし、セリフを合わせてくれた。 現場に台本は一度も持ってこない。全編対する人のセリフまで頭に入っている。
 正に大女優である。