プロフィール
みうらじゅん
1958年京都府生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、漫画家、イラストレーター、作家、ミュージシャン、ラジオパーソナリティーなどで幅広く活躍中。近著に写真集『アイノカテゴリー』(ぴあ)、『青春の正体』(ベストセラーズ)などがある。

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2006年9月 4日 (月)
スターと遭遇

Hikomaro  ふだんテレビで見ている人を街角で見かけると、かなりドキドキする。
 大ファンならなおさら、「どうしよう!?」とソワソワする。握手、「がんばって下さい」、サイン、できればツーショット写真を撮って友達に見せたい。

 でも、スターは急いでる。
 渋谷の歩道橋を駆け足で降りてきた。
 オレはすかさずバッグからカメラを取り出し、シャッターを押した。
 どうやらまわりは、スターの存在に気づいていない。気づいたときには手遅れだ。大パニックになること必至である。

 なんと、スター、階段の途中で立ち止まり、何やら話し始めたではないか。常人なら完全にイカれた光景だが、そこはスター、胸元にピンマイクがついているのだろう。その姿をどこか離れた場所からテレビカメラが狙ってるんだろう。オレは釘付けでスターを見つめていた。微かに声が聞こえてくる。

「どんなにおいしいか、行ってみましょう!」

 いつもの声、いつもの調子だ。
 すると、スター、またも駆け足となり、一気に階段を降りたかと思うと、オレの目の前を走り過ぎ、地下の店に入っていった。

 きっと数分後、大口開けてスターは、
「これは正しく、親子丼界のIT革命やぁー」的なコメントを発しているのだろう。
 オレはまだ店の看板を見つめていた。

 東京に出てきて30年近く、いろんなスターに出くわした。しかし、今回ほどドキドキしたことはない。

 「あの時、声をかけなくて良かった」

 そう思いながらオレは渋谷の雑踏に紛れたのだった。今年の夏、一番の出来事――。