プロフィール
みうらじゅん
1958年京都府生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以来、漫画家、イラストレーター、作家、ミュージシャン、ラジオパーソナリティーなどで幅広く活躍中。近著に写真集『アイノカテゴリー』(ぴあ)、『青春の正体』(ベストセラーズ)などがある。

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2006年1月27日 (金)
第6回 アニマル・ハンティング

 ウォーーーーッ!!
 ギャーーーーーーッ!!
 グォ~~~~~~~~ッ!!!
 
  平和ボケしたこの日本に野生の雄叫びがこだまする。
 ウググググググ……。
 奴らは腹を減らしたアニマル。今にも飛びかかって肉を食らおうとする。
 気を付けろ!
Miuraanimal  君の隣に何食わぬ顔をして佇んでいるオバハンは今にも牙を剥く、実はすばしこい女豹なのだ。男の幻想にある女豹とは大きくイメージが違っても、それが現実なのだから仕方ない。諦めるしかない。

「上の子が先月、やっと結婚しましてねぇ」
 女豹は世間を欺き、油断させる。
「いや今度、婦人会で草津温泉に行きますのよ」
 ウグググググ……。
 若い娘も好んでアニマル柄の服を着るが、それはあくまでフェイク。オバハンは皮膚の一部だ。嘘だと思うのなら触ってごらん。
 ギャオーーーッ!!
 噛み付かれるぞ。
 
  子供の手も離れた主婦は野獣化する。
「もう余生は好きなことだけしますわ」
 生活という檻から解き放たれたオバハンはアニマル化する。日本のみならず、世界の観光地に向かい疾走するのだ。
 
 グォ~~~~~~ッ!!!
 男たちよ、かみ殺されないうちに逃げろ。勝ち目はない。

2006年1月20日 (金)
第5回 ムカエマ

 特に正月。本来なら厳粛に訪れるべき初詣。しかし、どーした! 神社の絵馬掛け場では毎年、ボンノウムキ出し自己中心な願いごとが大量に勢揃いし、“これが神様に頼むことかよ!”と、見る者をムカムカさせて止まない。
 ムカつく絵馬、すなわち「ムカエマ」のことである。
 私は毎年、三が日が終わり、調子こいた街が少し落ち着きを取り戻した頃に成敗の意味を込めて有名神社の絵馬場を訪れることにしている。“兵どもが夢の跡”、ムカエマたちは冬の冷たい風に煽られ、カランコロンと音をたてる。“今年はどんな調子だ!?”、願いごとは世相を反映する。不景気な年は金が欲しいと願い、ちょっと景気が回復すると今度は恋人が欲しいと次々にボンノウを提示する。
Mura1  「吉○くんが私のコト好きになって、2人で幸せになれますように――」
 何の努力もすることなく、相手が勝手に自分のコトを好きになって欲しいと願うのか! 
 で、
「吉○くんがダメなら――」
 ちょっと待てよ! ダメでもいいわけか?
「香取慎吾くんと恋人になれますように」
だとぉー!! ムカムカムカッ!!!
 よく考えてみろ。これじゃ香取くんは二番手か!? 吉○くんに負けてるってことだな! これじゃ香取くんの立場がないじゃないかっ!!
 神様は何でも知ってる。そりゃ神様だもの。SMAPだって、KAT-TUNだって、何だって知ってるさ。でも他力本願、夢想家のあんたの願いごとなんて叶えてくれるはずがない!  そんなことは神様じゃないオレだって分かることだ。
 オレはムカムカしながら、その絵馬場を撮影した。人気のない昼下がりの絵馬場。オレの異常な姿だけがそこにあった――。

2006年1月13日 (金)
第4回 ドチャックのキャップ

 ラッパーたちのかぶるキャップとは一線も二線も画すキャップがこの世には存在する。その両者の違いは今風であるか、ないかである。

 今風とは一体、何なのか? というと、若い男女に受けているということである。若い男女に受けているということはどういうことであるかというと、それをかぶっていれば一瞬モテそうな錯覚をするということだ。じゃ、モテるとはどういうことなのかというと、モテない者にひがまれることである。

 モテているということは、あくまで他人がきめることで、いくら自分がモテていると思っていても他人の意見が入らない限り自己満足と見做されてしまう。

 だから今風のキャップをかぶるということは、モテたい気持ちの表れであって、せっかくかぶっているのにモテないようじゃ何も意味がないことになる。

 だから今風のキャップをかぶってもモテない者は、いっそのこと確実にモテないと思われる今風でないキャップをかぶることだ。

 今風でないということは土着(ドチャック)味が強過ぎて、かぶった者の個性を全く見えなくしてしまうパワーがある。

Miura113_1   “AMAKUSASHIRO”とは、益田四郎時貞の別称・天草四郎のことである。しかもこのキャップにはカッコ良く“NEW HISTORY HAS BEEN NEW”と金字で書き示してある。

 寛永14年、キリシタン信徒の一揆に推されて、その首領となった天草四郎は、幕軍に破れて翌年討死する。そんなキャップはどうだろう? 製品にする必要性すらないことにグッとくるではないか。

 このドチャック・キャップをかぶって裏原宿を歩いてもらいたい。きっと君が新しい歴史を作っていくことだろう。