セミが鳴くと、海、山、川、温泉に呼ばれている気がして落ち着かない。五十六になるオッサンである私が、最良の時は、と問われて即答するのが海水浴である。
子育ての時期に体験して、なかなかいいものだと思い、病みつきになりいまだに続けている。
海につかって力をもらって病気を治しているんだと、自分や周囲に言い訳しつつ、今年は三浦半島に的をしぼって、まず浦賀観音崎に行ってきた。
昨年までは、桑田佳祐を歌いながら茅ヶ崎だったけど、相模湾は浜が単調で荒いし汚いし、ということで、こぢんまりと砂浜と磯がセットになった場所を探したというわけ。
観音崎は大好きな画家・谷内六郎に縁がある。事前情報として、また、現地でリサーチして、立派な浜、人気の浜があることは知っていたから、目指せ観音崎だったのである。
岬の白い燈台、青い空、入道雲……あっ、この景色だ。谷内六郎がたびたび絵にした風景であり、代表的夏景色として知ってはいたが、実は初めて眺める景色であった。
それを目に焼き付けただけでも、5時間海に入って頭と顔をヤケドしたことなど帳消しにできる。むしろ笑い話の材料ができて有り難いくらいのものだ。ちょっと強がり。難儀したのよ、実際は。
テッペンが薄くなっているところに、前日バリカンで3mmに髪を刈っていたから、みるもおぞましい火ぶくれ、リンパ液。ここにかけないことも言われたが、まるでホラー映画である。
油薬塗ったくって、タオルで巻いて、『死霊のしたたり』『悪魔のはらわた』あたりを鑑賞しながら、「オレだって負けてないぞ」と対抗心を燃やす夜もあった。
1960年代の、あの夏最大のイベント、町内海水浴と、今もほとんど同じことをやって感動している自分が嫌いではない。波打ち際で稚魚をすくって、磯で小魚、貝、イソギンチャクと遊んで、多くの時間ただ浮かんで波間を漂っているだけ。帰り道の、あのトロンとしたけだるさまで含めて大好きだ。
また、黄金の海に漂いでることにします。
では、また。




